「悪ガラス小弥太」 あとがき日比谷の高層ビルの上を、カラスたちが「空気滑り」で遊んでいる。ビル風の突風を滑り台にして遊んでいるのだ。カラスはどこにいても遊びを見つける。ヤタは飛んでいった。あの朝以来、ヤタとは会っていない。でも、ヤタが飛んでいる富士の空はぼくの空といまもつながっている。長い長い、決してFaceBook向きではない話を、無理矢理、読まされた読者の皆様、ご苦労様でした。弥太ガラスの話は、本来、...
「ヤターッ! カムバック」その夕暮れ、別荘から500mほど離れたところだったか。カラスの群れに会った。何十派もいる若ガラスの群れだった。ヤタが飛んでいった群れだかどうだかはわからないけど、つい「ヤターッ」って、呼んでしまった。その先の梢から1羽のカラスがぼくの胸に飛び込んできた。ヤタだ。 # 悪ガラス小弥太ヤタはぼくを見つけて大喜びだった。「ギャッグゥルワ、グワ」と大騒ぎしながら、ぼくの耳をあま噛みして...
Bye Bye BlackBird大きな四角い車に乗って。人間3人、犬が1匹、猫が2匹、ケージの中にカラスが1羽。出かけるときは、まるで民族大移動。楽しいはずのゴールデンウィークのお出かけ。今度だけは違う。みんなでお出かけ。カラスを捨てに…。バイ、バイ、ブラックバード。Blackbird, Bye Bye. #悪ガラス小弥太秋から冬。ヤタの羽根や翼は完全に生えそろった。どこから見ても、もう子ガラスではない。濡れ羽色の大ガラスになった。縄...
ヤタ、帰る。 ヤタがいなくなって、空を見上げて歩くようになった。カラスが飛んでいるのを見ると、ヤタではないかと駆け出したし、電信柱にとまっているカラスを見れば、声をかけた。ヤタじゃないカラスは呼びかけてもそっぽを向いて「カア」と鳴くだけ。ヤタが話したカラス語には、ヤタなりの感情がこもっていたことに初めて気がついた。 # 悪ガラス小弥太「お父さん、お父さん、鈴木さんちに飛んでくるカラスがいるんだって...
ヤタ、巣立つ。「お父さん、ヤタがいないよ」散歩から帰ってきたヨメさんの声。「桜のなかにいない?」「いない。どっかへ飛んでっちゃったのかしら」「ヤター、ヤター、ヤター」 # 悪ガラス小弥太ヤタは突然、いなくなった。飛行訓練を始めたといっても、50mも飛んだことはない。近所にいるはずだと、自転車で路地から路地を「ヤター、ヤター」と呼びながら、走って回った。カラスが隠れそうな茂み、公園、探し回る。まだ、一...