
米大統領選の取材で一週間、フロリダ州とニューヨークに出かけていた。
フロリダは前回二〇〇〇年の選挙で開票の決着がつかず、新大統領が四十日あまり決まらないという前代未聞の大接戦が繰り広げられた州である。
九月にイラクとクウェートの国境周辺を見る機会があったので(その話はまたいずれ書きますが)、合わせ鏡で見てみようというのが今回の取材の目的。
「9・11事件」以後の「反テロリズム」の世相を反映して、戦時下で強権発動を行ってきた現職大統領が勝利するという予想どおりの結果になった。
しかし、ブッシュ大統領が「歴史的勝利」と自賛するほどの大差を付けた勝利であったかどうか。「保守対改革派」、「地方対都市」というアメリカを2分する「51%対48%」という際どい勢力図は今回の選挙結果でも変わりなかった。
選挙戦のもっとも大きな争点はイラク戦争だった。
ブッシュ陣営勝利の理由は、イラク戦争を対テロ戦争として位置づけ、保守票のとりまとめに成功したことにつきる。
対する民主党はどうだったか。ケリー候補のキャッチ・フレーズのひとつが「A STROGER AMERICA(もうひとつの強かるべきアメリカ)」という、意味がよくわからないコピー。ケリーだって強いアメリカの大統領になる、対イラク戦、対テロ戦に勝利すると選挙戦最終版で表明したわけだが。
こうなると、有権者には、イラク戦争についての考え方では、ブッシュもケリーも五十歩百歩の違いしかないということになった。
ベトナム戦争の元英雄、しかし反戦キャンペーンを行った「改革派」として知られるケリー候補では、もともと保守層の取り込みは不可能なはずだったのだが、僅差の選挙戦を争うため、ケリー陣営は「改革派」であることをカモフラージュするしかなかった。
その結果、選挙戦の最大の争点がイラク戦争であったにもかかわらず、アメリカにとってのイラク戦争という観点からしか論争が繰り広げられなかった。
(2004年11月16日「愛媛新聞」掲載)
写真:ケリー陣営の「A STRONGER AMERICA」の選挙運動フラッグ。選挙から1年たったいま、ケリー候補の顔を覚えている日本人は何人いるだろう。なんと戦えないキャッチフレーズ。
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