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野球とソフトボールの五輪復活は可能か?

今回はデトロイトからサッカーじゃなくて野球の話題です。

来春3月に開催が予定されている野球のW杯(World Baseball Classic)の詳細発表が行われるので、デトロイトにやって来ました。
12日に開催されるMLBのオールスター戦に合わせての発表ということになりましたので、オールスター戦も見ていきます。

このレポートをお送りしている方のなかで野球ファンはどちらかといえば少ないのですが、サッカーしか見ないと勝手に思っていた人と、アテネで長嶋ジャパンのゲームでばったり会ったりしていますから、面白いゲームであれば、サッカーでも野球でも、どちらでも楽しむことができるのが日本のファンかなという気がしています。

アメリカ人でも、最近は、結構、両方を見ている人がいます。
日韓W杯のときにたびたび取材先が一緒になって、仲良くなったG・ベクシーというNYタイムズのスポーツ・コラムニストがいます。アメリカのサッカーファンの間ではいちばん尊敬を集めている記者ですが、この人は、60年代の後半からヤンキースやメッツ番の記者をしていたので、当然、MLBについても詳しい。一昨年から久しぶりに野球も取材することになったときに相談したら、MLBの幹部を紹介してくれたのもこの人です。

日本はどうしてかなあ、野球もサッカーも等距離感覚で取材できるライターが少ないような気がします。野球担当は野球担当、サッカー担当はサッカー担当ときっちり分かれてしまう。どちらもスポーツだし、興行の世界なんですが。

ライターでなくても、去年のオールスター戦で、アルフォンソ・ソリアーノと一緒にヒューストンに来ていたテキサス・レンジャースの広報担当氏は、ぼくが背負っていたEURO 2004のデイバッグを見つけて、
「ポルトガルから来たの? そのバッグいいなあ。本当は、サッカーのほうが好きなんだ」
と正直に話してくれたなんてこともありました。
彼はヒスパニック系ではありませんでしたが、アメリカじゃ、サッカーではビジネスにならないから野球の仕事をしているとのことでした。

その反対のケースもある。
ロンドンのファイナンシャル・タイムスのサッカー記者(ISLやキルヒメディアの経営破綻を一緒に取材していた、いまはチェルシーの担当)は、「ヤンキース-レッドソックス」戦を見て以来、野球ファンになり、ときどきNYやボストンに飛んできています。

面白いゲームは、新たなファンを生み出すということだと思います。見る側が、野球だ、サッカーだと境界を設ける必要はないとぼくも思っています。

オリンピックの競技種目から野球とソフトボールが外れました。
現状を整理すると、2008年北京五輪までは実施し、2012年ロンドン五輪で廃止、2016年以後、復活させるかどうかは3年後のIOC総会で検討するということになる見込み。

日本人から見ると、野球って人気のあるスポーツだと思うかもしれませんが、国際野球連盟(IBAF)に参加している国の数は120に増えましたが(確か80年代は70か国ほどしかなかった。参考までに現在のFIFAの加盟国は204だったかな?)、国際的なスポーツではなかったのです。

この問題のバックグラウンドを整理すると――、野球やソフトボールが面白いスポーツだということを、野球界がヨーロッパの人たちに伝えることができなかった、あるいは伝える努力をしてこなかったからということになるでしょう。

もちろん、1970年代から、東海大関係者が旧ソビエトに野球を指導に出かけたり、90年代には、元阪神の吉田監督がフランスに野球指導に出かけたりしていた時代はありますが、五輪の正式種目に決まってからは、そういう動きがストップした。
MLBも中国棒球協会に元大リーガーのラフィーバー(ロッテにも在籍していました)をコーチとして送り込んだりしていますが、開催国出場する中国チームのテコ入れのための支援でしかなかった。

昨年、アテネ五輪の取材で、組織委の財政問題の話をギリシャの記者たちとしていたときに、
「五輪が終わったら、不要な施設をスクラップする」
というアテネ市の方針を聞きました。スクラップ・リストの一番目に挙げられたのが野球場とソフトボール
場でした。
ギリシャにも野球という新しいスポーツの種がまかれたかなと期待していたのですが、ギリシャ代表チームは、ギリシャ系アメリカ人の2A・3A選手で組織したチームで、ギリシャ本国の選手は結局入らなかった。チームの強化資金もギリシャ系アメリカ人のお金持ちがスポンサーになって提供していたように記憶しています。
せっかくいい野球場があっても、五輪が終わったら、だれも使う人がいない。そんなスタジアムを開けておくと、ランニングコストだけで金がかかって仕方がないので、さっさとつぶしてしまおうということになったわけです。
同じような話は長野五輪の後にも、不要施設をどうするかという問題がありましたから、日本だって、アテネ組織委の悪口を言えた義理ではないのですが。

せっかくヨーロッパにできた新しい橋頭堡(きょうとうほ=古い言葉でわかりにくいかもしれません。前線基地)ができたのだから、MLBでスタジアムの維持費を見たらどうかいという話を、MLBのある部長にしたのですが、ビジネスにならないことには予算を使うことはできないというのがMLBですので、そんな話をしても無理だったのでしょう。

2012年五輪の有力開催地はNYかロンドンと噂されていたあいだは、3年前の野球廃止論も遠のいたと(もしNY五輪開催であったら、野球もソフトボールも残されていたはずですから)思われていたのですが、NY州の財政事情から五輪関連施設の地域再開発構想が流れてしまったために、NYが有力候補レースから脱落し、ロンドンとパリで争われることになった。こうなると、IOCも現金なもので、無駄な予算がかかる種目は廃止してしまおうという方向に走ってしまった。

いま考えると、ロンドン五輪組織委は、スポーツ界で能力のあるスタッフを次々にヘッドハンティングしていました。ぼくがつき合っていたUEFAの事務局の幹部なども、ロンドン五輪組織委にさっと転職していますが、彼のスポーツ界での人脈の広さがそのまま誘致工作に使われたわけですから、ロンドンが誘致に成功したのにぼくは納得がいっています。

「野球が廃止にならないように、ロゲ会長などにも手紙を出したのだが」という程度のことが運動だと勘違いしていた某プロ野球機構の幹部の話などは、「井の中の蛙…」ですね。
本当に残したかったのなら、それなりの運動、ロビーイング活動やPRもしておかなきゃ。そのあたりがまったく甘かった。
IOCのロゲ会長が、野球復活の見返りに、MLBに対して、IOC基準のドーピング・チェックの導入と、北京五輪へのドリームチームの派遣を要求していると報道されていますが、MLBでも、ドーピング対策のほうは、アメリカ世論の批判を浴びたために導入することになりましたが、ドリームチームのほうは正直言ってむずかしい。

MLBがシーズン中に支配下選手を五輪に出すとは考えにくいのです。
たとえば、1年間各チーム162試合のペナントレースを10試合削って、主力スター選手を出して、五輪に協力するというような案に、オーナー会議が合意するはずがない。

すでにシーズンのテレビ放送を何年契約で契約しているテレビ局(FOXとかESPN)があり、五輪の放映権は別な局が取るわけですから、ライバル局にいちばんおいしいメニューを持っていかれて黙っている世界ではないので、2008年の北京五輪でMLBがドリームチームを派遣するというような可能性はほとんどないというのがぼくの予想でした。

「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の記者発表の際に、MLBPA(MLB選手会)理事のドン・フレールに、IOCのロゲ会長が野球復活のために要求している宿題について、いったいどうするつもりかいと、聞きました。ドン・フレールというのは、MLB選手会の顧問弁護士として、選手会の権限を飛躍的に増大させた功労者で、今回のWBC開催についてセリグ・コミッショナーと共同歩調をとった選手会側の責任者です。

「2008年の五輪予選だと2007年中ということになるが、MLBのドリームチームの派遣はとてもむずかしい。実現不可能だと言ってもいいかもしれない。まず、時間的に調整する余裕がない。それと、野球の国際化については、MLBも選手会も、WBCを優先したいというのが現在の方針だ」
と、フレールは答えています。

オールスター戦の前夜祭で、ジェニファー・フィンチ(アテネ五輪のソフトボールの金メダリスト・ピッチャー)がそばにいたので、ソフトボールの五輪種目からの廃止について、彼女の考えを聞きました。
フィンチは、MLBの選手たちを相手に三振を取るので有名な米ソフトボール界きってのブロンド美人のエースで、現在はMLBのTVレポーターとして活躍しています。
――今回のIOCの決定は?
「Horrible!(ひどい。あんまりよ)IOCはなんてひどい決定をしたか」
――どうしたら復活できると思うかい?
「MLBが北京にドリームチームを送ることが、いちばん効果があると思う。ソフトボールだけの復活は無理ね。野球とセットでないと」
――ドン・フレールは、まずそれは無理だと言ったよ。
「うそでしょう。そんな……。MLBとソフトボールと、アメリカも日本も、野球やソフトボールが盛んな国がIOCに働きかけるしかないのよ。でも、ドン・フレールがそう言ったのだとしたら、ものすごくショック。わたしたちの目標がなくなってしまうわ」
フィンチ、泣きそうな顔になって首を振りました。

日本のソフトボールの選手たちも、同じようなショックを受けていると思います。
野球ファンの裾野を広げるためには、ソフトボールの存在は大きいのです。
いま、NFLが日本の小学校などに、ボールや指導キットをせっせと配って、アメリカンフットボールを知ってもらいたいと盛んにPR活動をしています。小学生にはまずタッチ・フットボールからはじめてもらって、アメリカンフットボールのルールに馴染んでもらおうというアイデアですが、野球への入門にソフトボールは力を発揮してくれていたし、女性に野球のルールや面白さを知ってもらうにも、ソフトボールは「ミニ・ベースボール」として存在意義があると思うのですが。

日本の競技連盟では、野球だけが高校、大学、社会人というアマチュア組織と別にプロ野球機構があるという不思議な構造の組織になっていて、ソフトボールはソフトボールでまったく別な競技連盟ですから、連携なんてしてこなかった。だいたい高野連とプロ野球機構が長い間、対立する関係にあった(高野連は朝日系、プロ野球は読売系)ために、相互交流とか相互連携という発想がなかったのです。

野球とソフトボールの五輪種目復活に、MLBの力を期待できるかどうかは望み薄だというのが現状です。もし、それでも両種目を復活させたいのであれば、MLBに次ぐ大きな組織である日本の野球界が積極的に復活のための働きかけをしないと、実現はむずかしいでしょう。
あるいは、井の中の蛙を決め込んで、「いいんじゃないの。五輪スポーツでなくても。これだけ野球ファンがいるんだから」と、あぐらをかいてしまうか。

そうすると、どうなるか。野球の国際大会としては、MLBが今回、正式発表した「ワールド・ベースボール・クラシック」という野球W杯が野球界最大の国際トーナメントとして育つことになり、そこに出場した日本のトップレベルのプロ選手がMLBに大量に流出することになるでしょう。国際交流が定期的になってくれば、野茂やイチローやゴジラ松井と同じように「もっと上のレベルで自分の力を試したい」と考える選手は、どんどん出てくるはずですから、MLBのトップたちが描いているMLB市場のアジアへの拡大という青写真のとおりの野球世界が成立することになる。
オリンピックの問題は別にして、日本プロ野球機構がMLBのW杯構想に対して最初に批判的な姿勢を見せたのは、MLBのそういう将来的な基本構想に気がついたからでしょう。

野球ファンの立場から言えば、日本のプロ野球のレベルを、日米野球のようなエキビジション・マッチ(顔見せ興行)ではない、勝負のかかったトーナメントで見てみたいという希望はあるわけですから、野球もW杯をやってほしいというのが本音です。
アテネ五輪で長嶋ジャパンが注目を集めたのも、長嶋人気で動いた大量のスポンサーマネーのためだけではなく、日本の野球のレベルはMLBの選手たちが出ない大会なら、オールスター軍団で臨む日本が金メダルを取るだろうという期待があったためです。

日本のプロ野球選手会が野球W杯について、賛成とも反対とも見える微妙な反応を見せていますが、野球もW杯で見てみたいというファン心理を考えれば、参加せざるをえないはずなのですが。

この項、次回に続けます。

2006/07/14 石川とら デトロイトより

PS:
7月後半からは日本にいます。やっと春から初夏のツアーが終わります。
いただいたメールにも返事がかけるようになりますので、問い合わせや注文は遠慮な
く寄こしてください。とら。

野球W杯WBC関係 次のレポート--->http://tra3.blog43.fc2.com/blog-entry-133.html


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