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【スポバカ】 フットボール・ハイ 7 フットボール・ハイ

6月2日
 Aは日本戦のフィルムを抱えて、一時帰国。とんぼ返りでポルトガルに戻ってくる。
 しばらくは予定のない一人旅である。

 UEFAのS女史から、EURO2004の取材パスもプレス・チケットもなんの問題もないから心配しないようにとのメール。
 取材希望が殺到する人気カードばかり申請していたので気をもんでいたのだが、一安心。買い集めておいたチケット(現物はぼくの手元にはまだ届いていないのだが)の処理をまだ東京にいるKに頼む。

 ホテル代も食事も馬鹿高いマンチェスターを早々に引き払い、どこに出かけるか。
 ローランギャロで全仏をというつもりだったからパリに宿は押さえているのだが、クォーターファイナル、セミファイナルあたりの安いチケットが見つかりそうにない。安いといったって、いまからじゃ定価の数倍のチケットになる。

 旧知のチケット・コーディネーターのPにメールを入れると、「手配できないことはないが、1500か2000ユーロになる」という返事で、ちょっと手が出ない。Pはリスボンにいるとのこと。EUROでまた荒稼ぎをする気だろう。

 フィレンツェにいるはずのイラクチームも訪ねないといけないのだが、チーム関係者に何度か電話を入れてもつかまらず。

 とりあえず、フランクフルトに戻ってマインツでU21戦の続きを観ることにする。
 空港でOと一緒になった。OはスポーツN紙の海外サッカー担当。彼も日本代表戦、EURO2004と、久しぶりの長期遠征である。Oはマルセイユに飛んで、ツーロン国際ユースに向かうとのこと。U19の森本貴幸(ヴェルディ)がワンランク上の国際大会でどの程度、通用するのか観ておきたいのだそうだ。この時期のヨーロッパは、スポーツイベント花盛り、てんこ盛りである。

 マインツへはフランクフルト空港から電車で20分。
 駅前の旅籠にトランクだけ預けて、夕方のゲームまでライン川沿いを散策する。
 先日、寄ることができなかったグーテンベルク博物館もマインツの大聖堂のすぐ裏にあった。
 15~16世紀の初期活版印刷本のコレクションを見ることができるのは、世界でこの博物館だけだろう。この博物館に所蔵されている地獄絵を一度、見たかった。

 スポバカな旅だっていろいろ寄り道もするのだ。
 カトリックの布教のために印刷された膨大な量の宗教書が展示されているのだが、ラテン語はチンプンカンプンでも、脇に掲載されている図版類が面白い。何百部とコピーされ世間に流布されていったイラストレーションは、教会に飾られている一枚ものの宗教画と違って、象徴性よりも説得性が必要とされたのであろう。実に写実的だ。

 地獄絵にしてもそう。磔刑、斬首、釜ゆで、手首や足首の腱を切る刑、眼をくり抜かれる刑、宦刑、猪に襲わさせる刑……。
「非カトリック世界で行われたる悪行図」として描かれたさまざまな大量殺戮のディテールと線描の確かさ。想像で描かれた仏教地獄絵と違い、まさに生き地獄絵図である。首を切り取られた屍も、耳をそぎ落とされて体をよじらせて叫びを上げる捕虜も、腑分け図のように写実される。それらの禍々しい光景は15世紀前後のライン世界に現実にあった大量殺戮であった。

 マインツはライン川の交易で栄えたが、時にその川を軍船が押し寄せて町の大半を焼き払われたこともあれば、交易船が疫病をもたらすこともあった。

 ジャガイモやトウモロコシがもたらされる以前の中世ヨーロッパ。都市間戦争は日常茶飯事であり、勝者は敗者の生殺与奪を握るのがあたりまえの競争世界。敗者の美学などという観念など生まれようもない勝たねば生き残ることができない世界である。

 ここ数年、ISLの破産、キルヒ・メディアの経営破綻といったヨーロッパのサッカー・ビジネスを取材してきたが、見事に弱肉強食の争い。利権を押さえることなら、生き馬の目を抜くことなどあたりまえの生き残り戦争を見てきた。利権ぐるみの企業買収、利権資産の逃避、契約不履行なんでもござれで生き残る。ハイリスクであろうとローリスクであとうと、ハイリターンが要求される利権ビジネス。信用第一の日本的経営感覚など通用しない世界であった。

 他者を蹴散らす闘争の歴史こそがヨーロッパ世界なのだ。グーテンベルクその人でさえ、印刷技術を開発はしたが、技術開発に資金が足りず、最後は融資してもらった金融業者から印刷工房を差し押さえられて破産してしまった。
 サッカーの話にこじつけるつもりはないが、たとえばドイツ代表チームがここぞというトーナメントで勝ち上がってくるメンタリティーは、長い歴史のなかで受け継がれてきた闘争本能であるのかもしれない。

ヨーロッパU21決勝ラウンド「ドイツ 1―2 ポルトガル」戦 マインツ

 U21決勝ラウンドはこの日がグループ・リーグ最終戦。
 前日、終了したグループA(イタリア、ベラルーシ、セルビア・モンテネグロ、クロアチア)は大混戦の末、イタリアとセルビア・モンテネグロが勝ち残った。

 第2戦までで1勝1分けの勝ち点「4」で首位を走っていたベラルーシ、最終戦のセルビア・モンテネグロ戦で退場者2人を出してしまい、「1―2」の悪夢の逆転負け。

[グループA]
○セルビアモンテネグロ 3―2 クロアチア×
×イタリア 1―2 ベラルーシ○
△ベラルーシ 1―1 クロアチア△
○イタリア 2―1 セルビアモンテネグロ×
○イタリア 1―0 クロアチア×
×ベラルーシ 1―2 セルビアモンテネグロ○

 グループB(ドイツ、スイス、スウェーデン、ポルトガル)は、第2戦終了時点で勝ち点「6」のスウェーデンは準決勝進出確定。勝ち点「3」のドイツが続き、勝ち点「1」のポルトガルはドイツに勝てば、準決勝進出もありという状態。

[グループB]
○ドイツ 2―1 スイス×
○スウェーデン 3―1 ポルトガル×
×ドイツ 1―2 スウェーデン○
△スイス 2―2 ポルトガル△

 ポルトガルは、予選ラウンドに出場していたクリスチャン・ロナウド(マンU)、ポスティガ(トットナム)、クアレスマ(バルセロナ)らは、EURO2004のA代表入りしてしまったため、まったく知らない若手の選手ばかり。

 引き分けでもOKの地元ドイツ有利かと見ていたのだが、U21世代の若いチームにはそのような心理的優位などは通用しなかった。

 両チームほぼ互角のボール・キープが続いた前半22分、ポルトガル、ドイツ・バックス裏へのロング・ロブにトップのユーゴ・アルメイダが抜け出してGKの頭越しのループ・シュートを決めて先制。ポルトガルの若手、ボールタッチが柔らかい。

 しかし、この1点リードでポルトガル、気持ちが守りに入ってしまったのか、ラインが下がってしまい、前半終盤は押されに押される。
 追いつかれることになるかなと思っていたら、案の定、40分、センターバックのクリアミスをシュワインシュタイガーに拾われて「1―1」の同点。前半「1―1」。

 後半、勝つしかないポルトガル、「3―3―3―1」の攻撃的な布陣に変え、トップも先制点を決めたアルメイダに代えてロレンツォを起用。

 後半開始とともに雷。スタジアムを初夏のシャワーが通り過ぎる。塗れたピッチの上を赤に緑のコマネズミたちが跳ねる。

 ポルトガルの突進、見事。ボールを持ったらとにかく前へ前へドリブル。横パスなんかしない。空いたスペースへ誰かが走り込み、スルーを入れてくる。今度はドイツが受けにたってしまい、ポルトガルの前線からの激しいプレスにボール・キープもできない状態に。

 78分、ロレンツォが快足を生かして突破して決勝点を決めた。「2―1」。そのまま終了。
 双方でイエローカードが12枚飛んだ激しいゲームだったが、ポルトガルの小気味よい攻めのサッカーを堪能できた。「2―0」から「2―2」に追いついた2002年W杯予選の「ポルトガル―オランダ」戦を想い出させるポルトガルが走り勝ったゲーム。

 この結果、グループBはスウェーデンとポルトガルが準決勝に進出。
 準決勝は「イタリア―ポルトガル」「スウェーデン―セルビアモンテネグロ」の争いに。
 ポルトガル、日本のファンにもぜひ見てもらいたい楽しいサッカーをするチームだが、イエロー累積を考えると、ポルトガルとセルビアモンテネグロはやや不利か。

6月3日
 パリに移動。

 イラク協会のフセイン・サイード会長とやっと電話がつながったかと思ったら、バクダッドにいるとのこと。
 イタリア合宿がブッシュ大統領のイタリア訪問とぶつかり、イタリア政府がイラク・チームとイタリアのクラブ・チームの練習試合にOKを出さなかったため、バクダッドに引き揚げたのだという。
 ヨルダンでW杯予選の台湾戦をやるから、それを観に来いというのだが、今回は見送り。

 ネットで調べると、オランダとフランスがEURO2004直前の最終テストマッチをやるとのこと。取材申請など、とっくに締め切られているのだが、メールとファックスで追加申請を出す。もしダメでもチケットは行けば、見つけられるだろう。

2004/06/03 石川とら


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