昨日(3月16日)はいろんなことがありすぎて。
いちいち整理しないけど、好きな人には「へえ~」っていう話もあるので。

ホアン・マリシャルさん。ドミニカの英雄です。
「メキシコ-アメリカ」戦のまえ、プレスボックス(記者席)に上がるエレベーターで、ホアン・マリシャルさんと一緒になった。
マリシャルさんはサンフランシスコ・ジャイアンツで243勝を挙げたドミニカ出身のメジャーリーガーとしては、フェリペ・アルー(モイセスのお父さん)と並ぶ大御所。2、3年前までドミニカのスポーツ大臣もやってらっしゃった方。
でも、とっても気さくなおじさんで、オーランドでも何度か一緒になっては冗談を言い合っていました。
ドミニカがセミファイナル進出を決めたので「コングラチュレーションズ」とお祝いを申し上げると大喜びで。
マリシャルさん、米テレビ局ESPNの解説で、セカンドラウンドはアナハイムの担当になったものだからドミニカの試合を観ることができなくて、顔を合わせると、ふたりで「心配だねえ。プエルトリコもベネズエラもピッチャーがいいと、いくらドミニカの打線でも打てないから」と、話をしていたのです。
その時点では、日本もまだ目があると思っていたので、日本の心配よりもドミニカの心配をしてたわけ。
ところが、日本が韓国に負けちゃったから、こちらは落ち込んでいますし。
そうしたら、マリシャルさん、「でも、今回はなにが起きるかわからないよ。メキシコ、今日はやるかもしれないから。アメリカが負けることだってあるしね。だいたい、あの判定がなけりゃ、日本はもう決めてたんだから」と、慰めてくださった。やさしいんだ。

試合前にアメリカのベンチをのぞいたら、バリテックがひとり座っていたから、バリテックに「日本-韓国」戦の話を聞いてみた。
「心配したさ。日本が勝ったら、それで終わりだったから。気が気じゃなかったよ。ホテルのテレビが、日本-韓国戦を放送してなかったんだ。インターネットで時々、試合経過をチェックしても、いつまでも0-0のままだしね。日本のほうがチャンスがありそうなゲームだったから、もうアウトになるんじゃないかとね」
「そうだったんだ。さすがにぼくたちはギブアップだよ」
「残念だったねえ」
「いろんなことがあったけど(カナダに負け、韓国に負け)、ボストンに帰ったら、チームメートに、次からはWBCに一緒に出ようぜと話をするつもりかい?(バリテック、3日ほどまえに、そんな話をしてたので)」
「うん。この大会、面白いよ。ナショナルチーム同士で試合をするというのは、ふだんの野球とは別な盛り上がりがあるからね。選ばれたら、みんなぜひ出るべきだと話をするつもりだよ」
そのころ、メキシコの選手たち、バッティング練習中のオール・アメリカンのバッティング・ケージのところに集まって、A・ロッドやジーターをつかまえては、サインをしてもらったり、一緒の記念写真を撮ったり。登板のないロアイザが記念写真のセッティング役で、メキシコの選手たち、あこがれのスーパースターと一緒になれてキャーキャー騒いでいる。
前の晩には、チーム全員、家族同伴でディズニーランドに招待されてたしね。
「こりゃあ、期待しちゃだめだわ」という状態だった。
アメリカのメディアの興味も、メキシコに負けるなんて心配だれもしてない。クレメンスの引退試合というニュアンスが強い試合だった。
ぼくがはじめてメジャーリーグの試合を観たのが、78年かな。ノーラン・ライアンがここで投げるのを観た球場だから、クレメンスもノーラン・ライアンのことを慕っていたし、松坂大輔君なんかも、クレメンス・タイプの投手になりそうだし。松坂君がここで投げるのも観たし…というような、そんな興味でも持ってないと、真剣に観る気も起こらない感じだったんだけど。
日本から来てるメールなんか見ると、まだ一縷の望みを捨ててないファンがいたものだから。ゲーム経過だけは伝えることにしたわけ。
そうしたら、ああいう試合になったわけで。
日本の報道陣も、「王ジャパン」と一緒にサンディエゴ入りした(まあダメだろうけど、メキシコ-アメリカ戦の結果が出るまでサンジェゴに待機してないといけないので)記者諸君が多くて。
朝、ぼくも用事があったので、チーム宿舎を訪ねて、「御苦労様でした」というような挨拶をすませてきたしね。聞いたら、日本チームの帰国便もブックしてあった。

バック・マルティネス監督のUSA敗退会見。
試合終わってから、とにかく両チームの記者会見に出ないといけなくなりました。
アメリカのバック・マルティネス監督の悄然とした話を聞いて。
さすがに、今日はオブザーバーみたいなもんだから、鞭打つ質問は控えました。
アメリカチームが力を発揮できなかった理由について、マルティネス監督は、
「チームを招集してあまりに時間がなかった。せめて数試合、エキビションでいいからオープン戦をするなどして、チームの仕上げをする時間がほしかった。選手の起用については、すべてスターがそろっているし、どの選手も出すことを優先させざるをえなかった。その結果、選手起用が難しくなった。この方式のトーナメントでは、投手力のいいチームと当たると、そんなに打てるものではないので。打線が打てなかったのは、それは選手の責任ではない。本当にむずかしいトーナメントだったのだ」
と語っています。

メキシコのエストラダ監督とメキシコの勝利、日本セミファイナル進出を祝う
メキシコのラクィン・エストラダ監督。
会見席のいちばん前の真ん中にいるぼくに「どうだ。いいプレゼントになっただろう」と、何度もウィンクをしてくださるので。
「日本から来ているプレスとして、一言、ムチョ・グラシアスと、御礼申し上げます」
と、申し上げたら、会見室、大爆笑となりました。
日本チーム関係者は、まったくいないしね。仕方がないので、王監督あてのエストラダ監督のメッセージをお聞きして、喜びの記念写真。
「メキシコ・チームは全力をつくしてアメリカに勝つことができました。われわれの勝利が、王監督、ならびに日本チームに幸運をもたらすことをお祈りします」
HRを取り消されて2塁打になった「デービッドソンまたまた誤審」のあと、タイムリーを放ったホルヘ・カントゥ(デビルレイズだったかな)からは、
「イチローにぜひ伝えてくれ。おれ、やったからな。イチロー、勝ってくれ」
との伝言。
(イチロー君にも、サンディエゴで伝えました。イチロー君、大喜びでした)
会見も終わって、外に出たら、メキシコのファンたちが選手たちが出てくるのを待っていまして、日本の記者だとわかると、全員で「ビバ・メヒコ! ビバ・ハポン!」の合唱。
みんな、日本のセミファイナル進出を祝ってくれました。

メキシコの応援団
2006/03/17 サンディエゴのホテルより。石川とら
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