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【スポバカ】MLB ホワイトソックス-マリナーズ(7/11、シカゴ)

 野球を見なくなって5年になる。

 昨年、集英社の「スポルティーバ」という雑誌の企画で、ドミニカに野球を見にいくことになるまで、まるまる4年間、一度も球場に出かけなかった。

 それまでは、年に40試合か50試合見ていたのだけど、イチローが日本からいなくなった年を境に、ぼくは野球を見に行くのをやめた。野球を見るのがとんでもなくつまらなくなってしまったのだ。

 サッカーも野球も、原稿を書かないといけないとき以外(普段、スポーツ取材の仕事をしていないから、ほとんどそうなのだけど)、ぼくは記者席では見ない。野球には結構、お金を使ってきた。

 95年から2000年のシーズンまで、オリックスのゲームを西武球場や東京ドーム、千葉マリンはもちろん、神戸のホームゲーム、小倉、秋田、キャンプ地の宮古島まで、たびたび見に出かけた。
 イチローが日本から消えたとき、ぼくは長年つき合ってきた野球にサヨナラした。その後は、衛星放送で野茂やイチローのゲームを見ることはあっても、テレビの画面だけで見る野球は面白くもなんともない。いまさらほかのチームに乗り換えて見にいく気など起こらない。好きだったチームをぼくは見捨ててしまったわけだし、ほかのカードを見にいっても、身を入れて見ることなどできないのはわかっているから野球を捨てた。

 野球は7つのときから40年見てきた唯一のゲームだった。趣味を捨てるのは結構つらい。野球などないものだと心に蓋をして4年過ごしてきたのである。

 チームを失うファンはどうするんだろう。ぼくみたいにサッカーに流れるのか。あるいはMLBに向かうのか。

 今回の日本の球団削減構想とか、巨人軍の渡辺オーナーの言葉をインターネットで見る限り(記事になっている言葉がすべてだとは思わないが)、自分のチームを失うことになるファンの心の痛みは、あの方々にはわかってもらえないということだろう。所詮、球団経営陣は、身銭でゲームを見ているわけじゃないんだもの。

 大リーグに「ベースボール。ビジネスと呼ぶにはあまりにもスポーツで、スポーツと呼ぶにはあまりにもビジネスであるもの」という名言がある。

 日本のプロ野球経営陣は野球をビジネスとしてしか考えていない。百数十試合の結果に一喜一憂してくれるファンがあって、プロ野球という興行ビジネスが成り立っているということはいつの間にか忘れられている。ファンは応援したい選手、好きなチームだから球場に足を運んでいるのである。好きなチームがなくなれば、100万人単位の野球ファンが消えてしまうことを、ビジネスのことしか考えてこなかった野球関係者も頭のどこかにもう一度しっかりメモっておくべきだろう。

 MLBはナショナル・パスタイム(国民的娯楽)をファンに提供するという社会的公共性を果たしているから、反トラスト法の対象外として、独占的排他的経営を許されているのであって、独占的排他的経営を許されているからファンが集まってくるのではないという当たり前のパラドックスについて、日本で論議の対象にさえならないのはなぜなのか。いちばん大事な時期に「プロ野球誕生70周年」などというお祭りでうつつを抜かしていたプロ野球機構や取り巻きメディアの責任は大きい。

 ファンから愛されるチーム、だからビジネスとしても存続することができるチームを経営するためにMLBの各球団がどのように注意を払っているかを見ることも、今回の旅の目的のひとつ。
 シカゴ・ホワイト・ソックス(ア・リーグ)は同じ都市にシカゴ・カブス(ナ・リーグ)という人気球団があるため、経営には苦労してきたチームだ。ファンに愛される球団にするために、いろんなところで知恵を絞っているし、どの球団スタッフも、どんな小さな質問にも笑顔で答えてくれる。高津投手の加入でシカゴ在住の日本人ファンが足を運んでくれるようになったら、いろんな部署の職員が、簡単な日本語のあいさつをまず覚えた。

 「サンキュー」とお礼をいうと、「ドウイタシマシテ」と日本語で答えが返ってくる。こういうことってものすごく大事なことだと思う。
 アメリカのボール・パーク(野球場)は、まさにパーク(みんなに集まってもらう公園)として作られている。ヤンキース・スタジアムみたいに一目でダフ屋だとわかる「オッサン」たちが闊歩(かっぽ)している球場もあるけど、球場内部はもちろん、雰囲気作りに気をつかっている。たとえば聞こえてくる音楽。 
 選手たちのゲーム前の練習開始の合図は、ジェームズ・ブラウンの「アイ・フィール・グッド」。ゲームが終わって流れる音楽は「スィート・ホーム・シカゴ」。ヤンキースのゲームが終わるときに流れるのがフランク・シナトラの「NY・NY」。

 ゲーム中だって、たとえば高津投手が登板すると、電光掲示板に「TAKATSU TIME!」とフラッシュが流れて、高津投手のテーマソング(音楽じゃなくて、お寺の鐘がゴ~ン、ゴ~ンと4回鳴るのだけど)が流れて、その音を聞いてスタンドのファン全員が拍手で高津投手がマウンドに上がるのを迎える。
 あのお寺の鐘はどういう意味なのかな? アメリカにアンダーテイカーという棺桶を引きずってリングに現れる人気プロレスラーがいて、彼のテーマソングも同じような「ゴ~ン」「ゴ~ン」だけど、「TAKATSUが日本の魔力で相手チームを成仏させる」ということなんだろうか。
 高津投手本人に聞いてみたら、あのテーマ音楽は球団が作ってくれたのでよくわからないんだとのこと。ただ、ブルペンからマウンドに上がるまでに、拍手とあの音が本人にもよく聞こえているんだそうで、最近はあれを聞きながら「ヨ~シッ」と気合いが入ってくるんだとのことでした。

 高津投手、ぼくが見た対マリナーズ戦2試合とも登板しました(前期最終戦となる第3戦にも登板して5セーブ目を上げています)。とくに第2戦は、「2-3」の1点差の9回表に、マリナーズの上位打線3人を2三振と1塁ゴロと、ピシャリと押さえました。
 この日は3万7405人と満員の入りでしたが、高津投手の完璧な仕事にスタジアム全体がスタンディング・オベーション。

 ギーエン監督は、「今シーズン最大の発見が高津さ。いまのうちの成績を見てみろよ(7月11日にはとうとう1位で折り返しです)。高津がいなかったら、こんなところにいられたかい。彼が来てくれてオレも、チームも、シカゴのファンも、みんながハッピーでいられているんだ」と大絶賛でした。

 高津投手本人は淡々としています。
 「とにかく成績を残さないといけない1年契約だから。来年もその先も野球を続けるためには、今年の成績がすべてでしょう。仕事は日本にいたときと同じ。1点差で出るときはこの球場はフェンスも低いし、風があるので、一発を打たれないように心がけないといけない。だから、外角中心に攻めることになるけど、どうやってボールを振らせるかを考えている。ボールなら芯に当たる確率が下がるから。カーブもシンカーもボール半分かひとつくらい外したコースで勝負している」

 古田捕手に代わって高津投手の球を受けることになったサンディー・アロマー捕手にも話を聞いてみました。
 「高津はとても受けやすいピッチャーだね。球が速いとか遅いとかじゃなくて、まずコントロールがいいよね。バッテリー間のメンタルなコミュニケーションがうまくいくんだ、彼とは。投球のリズムとかテンポがぼくらの間ではピタッとはまっているんだよね。彼が英語やスペイン語を話さなくてもなんにも問題ない。次になにを投げたかっているか、黙っていてもわかる」
――はじめて高津投手の球を受けたときに、彼がクローザーになると予想していたかい?
 「全然。だって速い球がないピッチャーだったんだもの。キャンプで投げ込んでいるうちに、高津の球はすごくブレーキするようになったんだ。肩もできて、こちらのボールにもフィットしてきたんだろうね。WOW!このブレーキング・ボール(シンカーのことかな?)はいったい何なんだいという感じにね。こんな切れるブレーキング・ボールを放るピッチャーはメジャーにもそんなにいないもの。速い球なんか必要ないさ。あれだけブレーキすれば。相手のバッターはみんなタイミングがとれない」

 高津投手、最高のシーズン前半を終えました。7月11日の前期最終戦を終えたところで4勝1敗5セーブ、防御率1.30。
 「後半は、相手チームも対策を練ってくると思うけど、とにかくいまはチーム状態がいいので、この勢いをぼくが止めることのないように、1試合1試合、集中して投げていきます。ホワイト・ソックスも応援してくださいね」とのことでした。

 最後に、高津投手のゲームをシカゴに見にいく方にシカゴのおすすめ情報。
 シカゴ自然博物館がセルラー・フィールドからタクシーで5分ほどのところにあります。ティラノザウルスの「スー」がいるところです。
 それから、もし出かけるなら、土曜日のカードを入れると楽しいです。土曜のゲーム後は花火大会。それと、球場からタクシーで10分ほどのところのWabashという地区にブルースのライブ・スポットがあります。ぼくも「バディ・ガイ・レジェンド」というブルース・ライブの店に寄りましたが、この日はギター・ショーティのパワフルなブルース・ロックを堪能することができました。
 (7月12日 午前1時 ヒューストンに移動して) 石川とら

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