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日本サッカーよ、どこへ行く?――川淵JFA丸の座礁

6月に再開されるW杯アジア3次予選を前に、
日本サッカー界が試練に見舞われている。
代表戦の不入り、視聴率低迷。そうしたなか、
川淵三郎・日本サッカー協会会長が7月に退任する。
後任の人事は? 人気挽回策は?
W杯予選を前に、協会は足元を固めることができるのだろうか。


 サッカー日本代表戦の人気低迷が止まらない。
 5月27日に埼玉スタジアムで開催されるキリン杯「日本-パラグアイ」戦のチケットは4月13日の一般発売から2週間で、約8000枚しか売れなかった。

 愛知・豊田スタジアムで行われる「日本-コートジボアール」戦のほうは、土曜日開催で、代表戦中部圏初お目見えということもあって、ほぼ完売となっているが、埼玉スタジアムでは、現在の売れ行きでは定員の4分の1割れという危機的な事態も予想される。

 地元埼玉、10年来の浦和レッズ・サポーターはこういう。
 「青チーム(日本代表)の応援よりも赤チームのほうが大事ですから。いまは、熱心なサポほど、代表戦はどうでもいいじゃんと思っていますよ」

 2002年、2006年と2度のW杯には日本代表チームを応援するために苦労してチケットを獲得したが、いまはレッズの海外遠征でイランやオーストラリアにまで応援に出かけることがあっても、代表戦のチケットに目の色を変えてということはなくなったという。

 「買わなくても、直前になったら、安い招待券とかがまわってくるから。代表入りした選手は応援しますよ。でも、代表戦でよりもリーグ戦で活躍してくれたほうがうれしい」(先のサポーター)

 浦和レッズという日本最大の人気チームを抱える埼玉では、いまや「代表戦」はプラチナ・チケットどころか、どうでもいいゲームの扱いである。

■テレビ視聴率も低迷

 代表戦は(下の世代の「U-23」五輪代表戦もふくめて)観客動員数が伸び悩んでいる。
 開催地、平日夜開催か土日昼開催か、足の便は? 相手チームの人気や実力は?――といった条件次第で、観客数が上下するのはやむをえないが、ドイツW杯での「ジーコ惨敗」以来、代表戦でスタジアムが満杯になったのを見た記憶がない。

 もっとも集客力がある国立競技場でのゲームでさえ、一目で招待券でやってきたとわかる小中学生の団体客を入れても、2分の1か3分の2の入りという試合を何試合か見ている。
 「オシム人気」で、一時、持ちこたえるかに見えた観客数も、昨年7月のアジア杯以後はやや減少。W杯の端境期ゆえの観客減かとも思われたが、オシム氏の脳梗塞による突然の監督交代で「岡田ジャパン」になってから低迷傾向はより強まった。

 人気低下は、テレビ視聴率からもうかがえる。
 ドイツW杯「日本-クロアチア」戦で視聴率52.7%を記録したのを最後に、昨年7月の中国でのアジア杯で20%超えが4試合あっただけ。
 視聴率だけで判断するなら、北京五輪予選人気で沸いた卓球や柔道、バレーボールの国際トーナメントよりも低調だ。

 「日本代表」という人気ブランドのおかげで、サッカー協会は、キリンとアディダスという2大スポンサーと、2014年あるいは2015年までの長期複数年オフィシャルパートナー契約を結んでいる。テレビ放映権も、電通との間で2014年までの長期契約を締結。その合計額は、3社で総額400億円を超えると見られる。

 6年先まで巨大収益が確保されているとはいえ、「日本代表」ブランドの人気失墜は、将来的に高額契約をこのまま維持できるかどうかという協会の財政問題に直結してくるだろう。

 協会内部でも、代表戦の人気低迷に危機感を募らせ、さまざまな議論が行われたようだ。
 協会事業部は今回のキリン杯から、ネット上でチケットを直接販売する「チケットJFA」を立ち上げた。チケット販売とメールマガジンによるファンへの直接宣伝まで一括管理するシステムが完成したわけだが、それでチケットの売り上げ増が見込めるかは不透明だ。

 今回のキリン杯でも、小中学生向けチケットやファミリー・チケットを、1人500円とするなど、過去の高飛車な料金設定から考えれば、実質値下げの価格改定が行われた。また、最寄り駅からスタジアムへシャトル・バスを走らせるなど、サービス改善にも努めているのだが、それでもファンを引きつけることができないでいる。

 販売開始と同時にチケットが売り切れたなどという「サッカー・バブル」の時代はいまや夢物語である。遅きに失したとはいえ、協会がファンサービスに本気で取り組みはじめたのだとしたら大歓迎だが、協会の方向転換がファンにはまだ伝わっていないも事実だ。

 実売数の少なさに驚いて、また招待券をばらまき、見てくれだけの観客動員を図ることになるのか。しかし、そういう愚行をつづけていると、熱心なファンでさえ、チケットの購入を手控えるようになるだろう。

 なぜファン離れが起きたのか、サッカー協会には、協会幹部の都合から見るのではなく、苦い事実をしっかり認識していただきたいものだ。

 1993年の「ドーハの悲劇」や、1997年の「ジョホールパルの歓喜」、日韓W杯などをきっかけに代表チームに夢を託した世代が20代から30代半ば、40代へと年をとり、仕事や家庭、経済的な理由もあって、以前ほどサッカーの応援に走り回ることができなくなっている。

 サッカー・バブルはとっくに終わったと書いたが、そういう時代に、ごく少数の「サッカー・セレブ」しか手が出せない「リムジン・ハイヤー送迎付きボックスシート・ウン十万円」などという高額チケットの販売を目玉にする発想は、ファンの神経を逆なでする以外のなにものでもない。

 ボックスシート・チケットを1枚売る手間で、安いファミリー・チケット何百枚売るのと同じ利益が出るかもしれないが、「第二の中田英寿」クラスのスーパースターでも生まれてこない限り、リピーター獲得のためのサービス向上以外では、ファン層は広がらないだろう。

■気になる「ポスト川淵」

 代表チームにいま何が必要なのか。
 ファンが代表チームに期待するものは強さと新鮮さである。
 代表ブランドの価値を守りたければ、代表チームはW杯本大会に進出しなければならない。アジア予選での敗退は、代表ブランドの価値暴落を招くだろう。

 「岡田ジャパン」がアジア予選を勝ち抜くために、あるいは「反町ジャパン」が北京五輪でグループ・リーグで勝ち残るために、協会は真摯に全面支援しているだろうか。

 ドイツ大会での「ジーコ惨敗」から、オシム監督の招聘、そして「岡田ジャパン」の誕生までに、多くのサッカーファンが「代表離れ」していったのはなぜかを思い出していただきたい。

 ドイツW杯で勝ち点「1」に終わってしまったのはなぜかという反省や、信賞必罰さえ行わなかった協会の甘い体質に、ファンはあきれかえったのである。
 この7月には、2年前の会長改選では居座った川淵三郎会長(71)が、会長改選資格の年齢70歳未満制限を超えるため、任期満了で会長職から去ることになっている。

 協会事情に詳しい関係者の話を総合すると、次期会長と目されていた鬼武健二副会長(Jリーグ・チェアマン)は、会長選への出馬を固辞したそうで、小倉純二副会長(FIFA理事)、大仁邦彌副会長のどちらかが後任候補ととりざたされている。

 川淵会長はこれまでの会長歴任者と同様、名誉会長職に退くと見られているが、JFAハウス内に「名誉会長室」が新設されたことから、川淵会長が「名誉キャプテン」として、そのまま「院政」を敷く布石ではないかとかんぐる向きもある。

 新会長にだれが就任するにしろ、現在の「代表戦」の人気低迷は川淵執行部へのファンの不信感に根ざしていることを、新執行部には真摯に受けとめていただきたい。

「代表強化」こそがファンを取り戻す最大の手段である。協会財源が代表頼みである以上、協会の最大の職務も「代表強化」にならざるをえないのである。

石川保昌 2008年4月28日執筆 「読売ウィークリー」2008年5月25日号掲載
 
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