ああ、負けないでよかったぁ~。 山本監督が井端選手の両肩をマッサージして(北京五輪のときのなでしこジャパンが表彰式に現れたときの感じ)、「井端さま、さま、井端さま、さま…」と唱えながら試合後の会見室に入ってきた。ぼくも井端選手を迎えるために拍手をしてしまった。
いやあ、よく勝ったねえ。いっぱい文句を言いたいことや疑問に思うこともあるけど、こんなゲームを落としたら、どつぼに落ちるしかなくなる。
負けたら、明日、キューバとあとがない試合になっていたのだ。
「孝行息子、井端さまさま、神様、井端さま」なのだ。
山本監督の言葉
「日本中の人が井端さまさまと思っているんじゃないでしょうか。わたしはその何倍も井端さまさまと思っています」
両軍ともに、野手14人(日本は延長戦でなにかあったとき用に松井選手を残しただけ)、投手7人を投入する文字通りの総力戦。7回まで「0-2」で敗色濃厚。8回表ノーアウトの井端選手のヒットから、からくも「2-2」の同点に追いついたにもかかわらず、8回裏にまた1点勝ち越される。もうダメだ、9回表、1アウトで鳥谷が四球で出塁。しかし、長野が倒れ、2アウト一塁。ここで、鳥谷がセカンドに盗塁。
梨田コーチに確認すると――、
「ただ打つだけでは点が取れそうにないから。相手の控えキャッチャーの肩はそれほどよくないとわかっていたので、鳥谷には走れとサインを出した。そうしたら、キャッチャーがいい送球をしたので、ほんとに際どかったけどねえ。鳥谷がよく走ってくれました」
井端選手にも聞いた。
――鳥谷に盗塁のサインが出たのは見てたよね?
「ええ、鳥谷が走ってからどうするか考えようと」
――盗塁成功で9回裏2死二塁。でも、プレッシャーますますかかったでしょう?
「感じなかった。わあ、楽しいなあというか。打つか、取られるかのどっちかしかないんだからと半分、開き直ったのがよかったんだと思う。一回、空振りして、自分でも引っ張ろうとした振りになっていたので、いかんいかん、センター返し、センター返しと、また冷静になって打てた」
「野球は9回裏2アウトから」などという言葉があるけど、8回裏に台湾に3点目を取られたのを見て、地下の会見室へ下りていった。敗因となる投手交代の遅れについて、監督かコーチにどう話を聞くかを考えていた。ゲームの流れからいって、とても追いつけるとは思えなかった。同点になって階段を駆け上がって、自分の席で終了まで見て、日本の応援団のものすごい歓喜の雄叫びを聞いた。2回のWBCでも、あれだけの喜びの爆発は聞いたことがない。ああ、勝ってよかったなあと、本当に思う。
ブラジル戦もしんどいゲームだったけど、今日のゲームはそれどころではないね。
ゲーム終了から3時間も経っているのに、まだ少し身震いがする。見ててそうなんだから、選手や監督たちにはどんなにつらいゲームだったことか。
台湾チームの謝長亨監督は、「まだ心臓がパクパクしていて、次の試合のことを考える余裕なんかない。気持ちの整理をして、それから明日の試合に備えたい」と、気丈に応えたが、100試合も数十試合もあるリーグ戦の1敗とは違う。9回表2アウトまで勝っていたゲームを土俵際で落として、2敗すれば終わりというゲームを、明日、しかもキューバと戦わなければならないのだ。台湾の選手たちは夜が白々と明けるころまで悔しさで眠ることもできないだろう。
どんなにタフなゲームであっても、勝者はゆっくり眠ることができる。しかも一日、多く、休息をとり、あと1試合勝てば、サンフランシスコへの切符を手にすることができるのだ。
山本監督に聞いた。
――どうも投手交代がもたついたように感じるのですが? 延長戦を考えたからですか? それとも次の試合を考えたからですか(負けたあとの次の試合を考えざるをえなかった)?
「たしかに、投手交代については、負けてたら、ぼろくそに言われても仕方ない部分があったと思う。延長戦を考えたということもある」
と、山本監督は素直に投手交代が遅れたことを認めている。
宮崎での合宿以来、このチームについて感じているのは、監督やコーチが、ここを修正しないといけないなと気がついたことは、次のゲームまでには、反省改善しているということ。こういう即製のチームというのは、改善点をちゃんと直していってトーナメントが進むうちに、より完成度の高いチームになっていくという場合もあると信じたい。
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正直日本の拙攻が台湾を助けたような気もしますが、王健民のナイスピッチ、台湾の打者のきもちいフルスイングと、台湾代表の健闘ぶりが目立ちました。
今日のキューバ対台湾戦も楽しみです。