昨日(3月17日)の午前中にはドミニカチームも到着。ペーニャ監督やヘッドコーチのジュニオル・ノボアと本当に久しぶりに歓談。ペーニャとは5年ぶり。ジュニオルとは第1回大会以来だから7年ぶり。こちらも歳を取っちゃったんだが(この大会中に還暦になった)、彼らもしわがふえて貫禄がついた。
ぼくが仲がいい選手では、今回参加しているのはミゲル・テハーダとおさえのロドニーだけ。テハーダはもうすぐ39歳になる。引退したモイセス・アルーが選手ではなく、今大会のドミニカチームのGMとしてバックアップ役を務めている。
テハーダが早めにバッティング練習を終えて守備練習に戻ろうとしたら、ペーニャ監督自らバッティング投手になって、「ミゲル、もっと打って」と怒鳴る。
たぶんプエルトリコ戦でのチャンスでのポップフライがトニー・ペーニャには気に入らないのだ。ミゲル、バットと手袋を取りに戻って、またケージに入る。右方向、右中間、左中間へとリストを効かせたライナーが飛んでいく。おお、まだ若いじゃんと冷やかしてやりたくなるような当たり。ペーニャもウンウンとうなずく。
10年前はもっともっと飛距離も出たのだが、あれくらい強い当たりが出れば、明日はスタメンかな。今大会の打者では、日本の井端とキューバのセペタがぼくのお気に入りである。柔らかく強く打つとでも言ったらいいんだろうか。久しぶりにミゲルを見て、そう、このバッティングだよと思い出した。セペタのバッティングはミゲル・テハーダに似ていたんだ。
バッティング練習の間、外野で私服で球拾いをしている変なヤツがいると思って、双眼鏡で見てみたら、モイセス・アルー。モイセスはフェリペ・アルーの長男。40歳未満のドミニカ出身の野球人の兄貴分的な存在である。引退して現在はサントドミンゴのライオネスのGMとしてドミニカリーグで4シーズン連続優勝を果たしているんだそうだ。モイセスが後ろで「お前ら何やってんだ」と怒鳴ったら、みんなガンバルしかない。
クローザー役のロドニーも、タイガース時代と違って、歳をとって感情的になりすぎることがなくなったんじゃないだろうか。メジャーのクローザーという仕事はエモーショナルでないと務められない役ではあるが、若かったころのロドニーはいいときと悪いときの差がありすぎる投手だった。自分でも故障を経験したり、球団を変わったりして、昔と同じようにおどけたりはしているが、大人になった感じがする。ロドニーが今回の投手陣の兄貴分役。野手も含めた選手たち全員のとりまとめ役はミゲルということになる。監督がロイヤルズ時代にMLB最優秀監督賞を受賞したドミニカ球界きっての名監督トニー・ペーニャ(現在はヤンキースのコーチ)だから、今回のドミニカチーム、優勝を狙う陣容であることは確か。

さて「ドミニカ-オランダ」戦。
オランダのミューレンス監督が、今回の決勝ラウンドの開催地AT&Tボールパークをホーム球場にするサンフランシスコ・ジャイアンツの打撃コーチということもあって、オランダのホームゲームのような気分になってしまう。「オレンジに黒」のオランダのユニフォームがジャイアンツのアウェー用のユニフォームと似た配色。
両国国歌演奏時に審判団の真ん中にオレンジのTシャツを着たマスコットが立っているので、オランダチームにはあんなマスコットまでいたんだと感心していたら、ジャイアンツのマスコットのルー・シール(アザラシだったかな)。今日はでっかいオレンジのTシャツにオレンジのサングラスで、GIANTSとは書いてあるけど、どう見たってオランダの応援団のひとりになっている。「侍ジャパン」にもチーム・キャラを作ってチームと帯同させるといいんじゃないかなあ。球場スタッフもミューレンス監督を応援しているのがわかる。今日はオレンジカラーのスタッフが多い。
この子がルー・シール。フィッシャーマンズ・ワーフの船着き場でこのアザラシを見た。両監督のオーダー表の交換。ドミニカ側はペーニャ監督は現れず、ジュニオール・ノボアが代理で交換。試合開始直前というのは心理的にもっとも緊張が高まる時間帯なので、たぶんペーニャはベンチで選手に気合いを入れているのだと思う。ゲーム優先、勝利優先というのは実はこういうことも含めて。
オランダ、ドミニカ先発ヴォルケスの2四球、ワイルドピッチの乱調で、ノーヒットで1点をもらう。ヴォルケス、気合いが空回り。
オランダのマークウェルが相変わらずいい。キューバに投げたときも6回で9安打を打たれながら1失点で抑えた。打てそうで打てないというねばり強く投げるタイプのピッチャー。北京五輪の前の年にオランダのハーレムの大会で彼が投げるのを見たが、そのころからオランダチームのエースだった。アンドリュー・ジョーンズの従兄弟だかまた従兄弟だとのことで、オランダの投手陣の中では数少ないキュラソー出身組。
ドミニカ、牽制アウトやバント失敗と、マークウェルのムードで試合が進む。ヴォルケスも本来のピッチングに。
オランダのキャッチャー、リカルド、マークウェルの意図とうまく合わないときや当たりそこねのヒットを打たれたときなど、さっとマウンドに駆け寄ってマークウェルを励ます。高校野球のキャッチャーみたいで可愛い。昨日なども、あそこまでマメでなくてももう少し声をかけてもよかったんじゃないかと思うのだ。
5回裏、ドミニカチーム、やっとマークウェルのくせ球に目が慣れはじめたか、それまでの早めのカウントで打ちにいって凡打という淡泊な攻撃からファウルで粘れるようになる。1アウトからサンタナ、シエラの連続二塁打で同点に。気落ちしたマークウェルをレイエス、テハーダが連打で引きずりおろし、この回ヒット5本と1四球で4得点。ゲームはこれで決まり。
マークウェルは、たとえば日本チームが2次ラウンドに進出するときに、いちばん警戒していた投手だった。日本が決勝ラウンド進出を決めたあとで、橋上戦略コーチから聞いたのだが、「マークウェルは打てそうで打てない変わった投手だというスカウトからの報告があって、チームとしては彼と当たるのは避けようという判断をした。王建民を打てたわけではないけども、まだ王のほうが打てるだろうと。それは正解だったと思いますよ」
というくらい評価が高かった投手である。
しかし、そのマークウェルもメジャーのマイナー経験はあるが、昨年まで台湾プロ野球に所属していたはずだが、現在はオランダリーグで投げている。
もしマークウェルがアメリカ人であれば(たとえば40歳過ぎて20勝を上げたジェイミー・モイヤーのような左腕の軟投タイプの投手もいるわけだから)メジャーと契約できたかもしれない。試合後にテハーダと会ったのでマークウェルのピッチングについて聞いたら、「いい投手だったよ。タフだねえ。たんねんに低めに投げてくる」と彼もほめた。
マークウェルはいい投手なのだが、メジャーレベルかというと、それは違うというのがメジャーのスカウトたちの判断になるだろう。5回にドミニカに集中打が生まれるのは、偶然ではない。4回までのマークウェルのピッチングを分析して、改めて各選手に狙い球を絞らせ、打つ方向まで(センター方向のヒットが続いた)指示して、いい当たりのヒットが続いたと考えるべきだろう。ドミニカ野球といってもトニー・ペーニャがする野球は典型的なメジャー流のベースボールである。相手投手を、データを集めて丸裸にして攻略してくる。
丸裸にされても5イニングあるいは6イニング耐えられる球威とコントロール、メンタリティがある投手がメジャーレベルの投手ということになる。
日本戦後、プエルトリコのロドリゲス監督が語った「メジャーの野球」というプライドは、投手にしろ打者にしろ、メジャーはそのくらいレベルが高い選手が集まっているんだということが裏打ちになっている。
井端選手が言った、ここぞというときの連打、集中打を打てる選手が日本には足りなかったというのも、ドミニカの5回の攻撃を見るとよくわかる。強敵のピッチャーだからこそ、集中打でプレッシャーをかけて、できればマウンドから引きずりおろす。そういう力強さを持ったチームとなると、実際に今回のドミニカチームのプレイを見てみると、ドミニカのチーム力が抜けているような感じがする。
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