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3月19日ファイナル 2

ベイスボル・デ・ドミニカーナ、おめでとう。  2013WBCロドニー
ロドニーのプランタナ(マジック・バナナ)の説教

第1回、第2回の大会は、ファイナルのあと、そのまま日本チームの取材に追われて、お祝いもなにもなかった。記者会見で監督やイチローや大輔にお祝いは述べたが、選手たちの言葉の一言一句を正確に聞き取ることに神経が集中していたし、第1回は初めてのことだったから興奮していたしね。第2回もイチローのあの執念のヒットのあとだったから、優勝の喜びよりも、取材するほうも気持ちが高ぶっていた。
記者席だから露骨に態度には出さないけど、仲のいい友人たちがいるので、ドミニカの応援をしながらゲームを見ていた。ロドニーが最後のバッターを三振に打ち取ったところで、すぐそばに座っていたドミニカの記者にお祝いの握手をして、フィールドに下りた。通路のTVモニターでは、ドミニカの選手やコーチたち全員がマウンドで飛び跳ねているのが見える。
これまで2回の大会では、カメラマンとテレビクルー以外は、フィールドに出してもらえなくて、チームのナマの喜びをそばで見ることができなかった。今日はだれも文句を言うような気がしない。だってドミニカーノのお祭りだぜ。
ドミニカ・ベンチ裏の入り口で警備しているセキュリティ担当も、「入るの? 入れよ」と笑顔であごをしゃくって入れてくれた。そのままベンチを抜けて、ジュニオル・ノボア(ヘッドコーチ)のところに行った。ジュニオルは、サント・ドミンゴのラジオ局からの電話インタビューに応えている。ぼくが下りてきたのを知って、電話に応えながらウインクする。「やったぜ! 見たか」「ああ、見たとも。おめでとう!」肩を抱いて祝いを述べる。第1回大会でキューバに敗れたために日本と戦えなかったことを悔しがっていたジュニオル。やっとたどりつくことができたカンピオーネである。
代表チームのGMモイセス・アルーが優勝トロフィーを抱いて笑っている。試合前に、ベンチ脇で緊張した面もちでひとりだけピリピリしていたから、今日は声もかけられなかった。第1回大会ではモイセスがキャプテンだった。モイセスのまえでは、パピもテハーダもソリアーノもおとなしかったものだ。
「親父さん(フェリペ・アルー)は来ているのかい?」「ああ、今日は来ているよ」
「よかったなあ、トロフィーを見せられて。おめでとう」「ありがとう」
ロドニーがテレビカメラのまえでプラタナ(マジック・バナナ)を見せながらぶっている。
「ドミニカーナはこのプラタナで育つんだ。このプラタナのおかげで優勝できたんだ」
ロドニーも7年前、第1回大会のときはまだ細っこい身体ですごい球を投げ込んできた。プラタナ(揚げバナナ)をいっぱい食べたからロドニーの腰回りにはいっぱい肉がついた。彼は馬鹿なことを言ってはみんなを笑わせる。7年前もクローザー役で登板するときはドミニカの小旗を振りながらマウンドに走ってきた。
トニー・ペーニャは、ロドニーが冗談を言ってくれるお陰で、チームのみんながどれだけ緊張しないですんでいるかわかるかいと言ったが、若手投手たちと一緒にいるときは、冗談ばかりじゃなくてアドバイスもするらしい。

2013WBC 064
優勝記者会見。大統領からのお祝いの電話を受けているカノ、レイエス、ペーニャ、ロドニー

優勝会見中にドミニカの大統領から電話がかかってきた。ペーニャ監督、カノ、レイエスと電話に受け応えながら、会見がはじまった。
レイエス「大統領が私たちが果たした使命について、おめでとうと言ってくれています。この勝利はドミニカという国に捧げるものであり、またドミニカの国民すべてがずっと待ち望んできたものでした。この気持ちをどう言えばいいんでしょう。ともかくも私たちはすべてのドミニカの国民に対してなすべきことを果たしました。最初の二塁打を打ったとき、チームのことよりも、ドミニカのすべての国民の姿が私の目の前に浮かびました。そして一回に2点を取ることができた。それはとても大きなことでした」
ペーニャ「このチームは感動(エモーション)に満ちあふれているチームです。ホセ(レイエス)がセカンドベースで拳を振り上げて、やろうぜ、おれをホームに還してくれと、チーム全員に彼の気持ちを伝えたんです。そういう共感というものは、野球においてすべてともいえる瞬間なんです。このチームはそういう情熱が一瞬で伝わるユニークなチームでした。われわれはそういう一瞬一瞬をずっと楽しみながらプレーしてきました。なぜなら、このメンバーでまた一緒に野球ができるかどうかなんて、たぶんそれはむずかしいでしょう。だからこそ、われわれは楽しみながらここまでやってきたのです。そしていま、神はなんとお強いか、そして正義を示されたか、われわれは神の導きの助けを得て勝利を勝ち取りました」
ペーニャ「私自身はなにもしたわけではありません。私がしたことといえば、選手たちに方向性を与えたということだけです。実行したのは選手たちです。私は交差点で交通整理をする警官みたいなものでね。実際にグラウンドに出て自分たちはできるんだということを世界中に示したのは勇気をもった選手たちです。ドミニカの国民はそのことを誇りに思っているはずです。トーナメントが始まるまえに、私は大統領にこう申し上げた。『過去になし得なかったことに挑戦しよう』と大統領は運動なさっていたので、われわれもこれまでどのチームもなすことができなかった、一度たりと負けることなく、全勝でチャンピオンに就きましょうと」
レイエス「私たちはずっとこのチームに自信を持っていたし、負けるかもしれないなどと疑ったことはまったくありませんでした」
――所属チームのキャンプにはいつ戻るんですか?
カノ「はっきりしているのは、今晩、ぼくたちはお祝いをする。そして、ぼくたちは明日もお祝いをする。そして、木曜日に(明後日)スプリング・トレーニングに戻るのかなあ」
――ドミニカは地球上でもっとも人口当たり野球選手を産み出す国ですが、これまでトロフィーを得たことはなかったが?
ロドニー「それもプラタナのお陰じゃ。(会見場大笑い)どうやってわれわれが開発されたか? それがプラタナじゃ。世界でもっともプラタナを食べる土地だからこそ、世界でいちばん野球選手が産まれてくるのじゃ。このトロフィーは、わが国への最大の贈り物であり、もし4年後に神様がチャンスをお与えになるなら、われわれはまた勝ち取るであろうぞ」
ペーニャ「ドミニカはもっとも多くの野球選手を産み出す国だった。にもかかわらず、これまでトロフィーを勝ちえていなかったことを私は恥ずかしく感じていました。私は今日、神に感謝したい。やっとわれわれのチームが、野球界でドミニカを最上位にすることを成し遂げたことに。そして、このトロフィーはすべてドミニカ国民のためであると申し上げたい」
レイエス「私たちは次のことを理解しないといけない。これは三度目のWBCであり、われわれは三度目にして、はじめてすべての人がドミニカこそチャンピオンであるべきだと思い続けてきた希望を神の助けにより達成できたのだということを。私たちはみんながひとつになってそれを達成することができた。わかるかい? すべての人々と一緒になって達成できたんだ。ドミニカでわれわれを支えつづけてくれたファンに、100%の支援を送りつづけてくれた方々に感謝したい。私たちははこれまで勝つことができなかったが、このWBCに照準を合わせて、そして神のご加護をえて今回、勝利することができたのです」
カノ「完璧な人生なんてないんです。わかりますか? ドミニカにはいつも名選手、スーパースターがいました。しかし、神は知ってらっしゃった。いつ事が起きるかを。われわれはずっと最高のプレーをしてきた。そして、わかりますか? われわれのそばに神がともにいらっしゃったことを。それはとてつもない感動です。トニー(ペーニャ)はすばらしい仕事をしました。われわれはいつも幸せにプレーできました。われわれはこの大きな心的なエネルギーをもちつづけてプレーしてきました。またそうするように神から求められてきたのです。人々は言うでしょう。われわれがベストだと。でも、それは実際にはそうではない。われわれはいつも賛美歌を聴き、神がわれわれをここに導いてくれたのです。このチームとともにこうして勝ちえた場所を誇りに思います。そして、それはなんと幸せなことか」
ペーニャ「すべてのひとがその人なりの特別な幸せな瞬間を持っていると思います。われわれ野球人だと、たとえば、私自分の経験では、はじめてボールを打つことができたときのことや、はじめてのオールスターゲームや、プレーオフやワールドシリーズにはじめて出場したときのこととか、幸せな思い出を持っています。しかし、今日のこの勝利の瞬間というのは、それらの喜びとはちょっと違うんです。この喜びはわたしたちの心のなかにこれからずっとともにあるだろうと思うのです。どこが違うのか? メジャーのプロ選手としてのキャリアだけでは語れない別な要素がこのゲームにはあった。それは自分の国を代表して戦ったということですね。そのことがずっとわれわれの思い出についてまわるでしょう」
カノ「トニーが言ったとおり、みんなはじめての喜びというのをよく憶えていると思います。たぶんこの勝利は生きているかぎり、ぼくたちの心のなかに残るでしょう。このWBCでプレーしただれもが、この大会を思い出すはずです。この大会は本当にスリリングだったから。ぼくらはいつも楽観的だから。自分たちは勝つだろうと、そして、われわれの国ドミニカの名をすべての世界に広めることができるだろうと思っていた。そう、本当、お祝いに行かなきゃ」
レイエス「今日は忘れることができない日になる。ドミニカの名を世界中に知らしめることができたし、選手として、ゲームに勝ってトロフィーを勝ち取ったことを、私は絶対忘れない。これは私の選手生活、人生で最大の瞬間になるだろう。だって、私は私の国を代表して戦ったんだから」
ロドニー「世界中が我々の勝利を記憶してくれる。我々はドミニカの旗を空にはためかせたんだ」
カノ「ドミニカの矢を放ったんだ(ロドニーがいつもやるようにね)」
――ロビンソン、MVPトロフィーを勝ち取ったことついて?
カノ「これは自分の力だけで取ったものじゃないんだ。ここにいる仲間やチームメート、監督、ぼくにここにいる機会を与えてくれたドミニカ・チームのすべての人びとに感謝したい。チームメートの助けなしでは、MVPになることなんてできなかった。だからこのトロフィーは自分だけではく、チームに与えられたものだと言うべきだと思う」
――5回表に、雨のなか投げきったデデューノ投手の続投について?
ペーニャ「雨だったから、ドーテルに準備させていたので、デデューノは交替させるつもりだった。マウンドに行ってサミュエル(デデューノ)に交替だぞと言ったんだ。ところが、サミュエルは、嫌だ、投げさせてくれと言う。まだこのバッターに投げたい? 本当か? じゃあ、投げろということになった。
――デデューノがあなたの気持ちを変えた?
「そう。彼の言うことを聞いてしまった。監督として、投手を替えようとしてそんなことになったのははじめてのことだね。もし、あそこで打たれていたら、あいつのケツを蹴っ飛ばしてるところだったんだが、実際には自分を蹴っ飛ばしてデデューノを続投させた。そうしたら、彼は自分の仕事をやり遂げたというわけさ」
――なぜ、ドミニカからは才能あるプレーヤーが絶えず生まれてくるのか?
ペーニャ「ドミニカには常に中核となるようなプレーヤーがいて、みんなメジャーリーグでプレーしている。そして、毎シーズン、そのグループから何人かが出ていったら、今度は新しいプレーヤーが入ってくる。それを常に繰り返しているわけだ。なぜなら、ドミニカの少年は野球選手になりたいという子ばっかりなんだ。だから、毎日、新しい選手が入ってくるのさ」

ミゲル・テハーダとは球場の中で拳を合わせておめでとうを言ったが、ゆっくり話もできなかった。彼のプレーを見るのは、ひょっとしたら今日が最後かもしれないという気もしている。もう一度、挨拶だけでもしていこうと思った。
「おめでとう。長かったなあ、7年かかった」
「ありがとう。選ばれてよかった」
抱きしめてお祝いを言う。胸からぶら下げた優勝メダルがカラカラ音を立てた。
いつのオールスターだったか、MVPを取ったミゲルにお祝いを言ったことがあるが、そのときの晴れやかさとはちょっと違う。ミゲルはそろそろ現役生活の終わりにさしかかっている。
「昨日のセンター前はいい当たりだったよ。まだ若いじゃないか」
「うん。昨日はね」
「あんまりアメリカには来られないから、いいシーズンでな」
チームバスの乗り場でミゲルはまたおいでよと、ぼくの肩を抱いた。「いいシーズンを」。
祭りが終わって、野球少年たちは古巣のクラブに帰って行く。
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