野球というのは、打撃力だけがすべてを決定するわけではないのですが、早稲田の打線について書いたついでに、「高橋早稲田」になって大きく変わったことを紹介しておきましょう。
前回のオーダーをもう一度、見てください。
今季の早稲田打線で、前年からすでにレギュラーポジションであったのは、1番 重信、2番 河原、3番 茂木、7番 中澤の4人。5番の石井も出場試合数を見ると、準レギュラーという感じだったか。
高橋監督の新チームになってレギュラーを獲得したのが、下の4人です。
4番 丸子達也 過去3年で15試合13打数2安打打点0 →春のリーグで
12試合48打数21安打8打点打率.438で
首位打者。
5番 石井一成 過去2年で31試合61打数16安打打点7→春のリーグで
12試合42打数14安打7打点打率.3336番 道端俊輔 過去3年で23試合30打数5安打打点0 →春のリーグで
12試合43打数16安打8打点打率.3728番 川原孝太 過去1年で9試合3打数1安打打点1 →春のリーグで
12試合39打数8安打6打点5犠打打率.205そう。「高橋早稲田」になって4番を任された丸子にいたっては、昨年までほとんど起用もされていなかったのです。打席数を見ると、代打要員でもなかった。広陵高校時代は、甲子園でもホームランを打った長距離砲として知られた存在だったのが、早稲田に入って、鳴かず飛ばずのまま3年。
一年上にポジションがかぶる強打の内野手がそろっていたためなのか、あるいは長い間、故障していたのか、巡り合わせが悪かっただけなのか、去年まで見てないからわかりませんが。
高橋監督に言わせると、
「左方向、三塁方向にいいのを打つんですわ。流し打ちというのではなくて、強い当たりを飛ばす。練習見てたら、この子、天才やなあというような打ち方する。なんで、これを使えへんかったんかなあ。4番はこの子やと」
打者というのはいいときもあれば、悪いときもある。3割打てたらよしです。そのバッターのいいところを見て評価するのか。あるいは、欠点をあげつらってマイナス評価をしていって使わないのか。
丸子は2014年の春のリーグは4試合4打数0安打。2014年の秋は1試合1打数0安打という成績でした。代打で使ってみたのだが、結果が出ないから、使わなかったということだったのでしょうね。
私もはじめて彼のバッティングを見た、引き分けに追いつかれてしまった立教戦では、力みが見えて決していいバッティングではなかったので、はじめて4番に抜擢されると大変だろうなという程度にしか考えていませんでしたが。それ以後の試合では、全試合、勝負強いバッターであることを見せつづけ、最後にはリーディング・ヒッターまで取ってしまいました。
高橋監督は、丸子選手が中学時代から知っていたそうです。どうしてあの子がレギュラーも取れずにくすぶっているのか、理解できなかった。
高橋監督のバッティング理論は、左バッターはショートの頭を越える、右バッターはセカンドの頭を越える強い当たりを打てというものです。センター返しよりももっと反対方向へ強いゴロを打て。そういうバッティングを打線全体で続けることで、相手ピッチャーを打ち込んでいくというものです。丸子選手のバッティングというのは、まさに高橋監督がチームに求めていたものでした。
「自分のいいところをそのまま出して打ちなさい。練習の時のバッティングをやればいいんだから」と、使いつづけることで、これまで代打で力んでしまい、結果を出せなかった丸子選手の才能を全開させることができたということだと思います。
6番キャッチャーの道端にしても、高橋監督の鳴門渦潮高校(旧鳴門工業)と道端選手の母校、智弁和歌山とは始終、練習試合を行っていた関係もあり、彼が高校時代からよく知っていた選手でした。
道端選手に対しては、「甲子園に5回も出たキャッチャーが、なにやっとんの。レギュラーも取らんで」と、彼のプライドをくずぐりつつ、発破をかけました。
道端選手は別に肩が弱いわけでもないのに、先輩の捕手に比べると、肩が弱いように勘違いされていました。高橋監督は、問題は、キャッチングからスローイングへの流れでいらないクセがついているためだと見抜きました。監督就任と同時に、道端捕手のキャッチングからスローイングのフォーム矯正に取り組んだそうです。実際、スローイングまでの時間を0.3秒近く縮めることができるようになり、超強肩でなくても、盗塁は阻止できるんだと、道端選手自身、自信を取り戻すことができました。
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