異種間闘争の危機「飼ってらっしゃるんですよね?」と、路地でヤタと目が合ったらしいOL。「うちにもいるんです」
「オ~イ、こっちへ来てみな。オ~イ」自転車を止めて、桜の枝にとまっているヤタに呼びかける小父さん。
「昔、飼ってたんだ。カラスだって、飼うと、可愛いからねえ」
「今度、ゆっくり見せてくださいね。うちの実家でも飼ってるんです」と、毎朝、ヤタに声をかけていく女子大生。
荻窪の駅への近道だった路地を、毎朝、何百人かが通り抜けていたが、
「隠れカラスタン」であることをカミングアウトした同士が3人現れた。 # 悪ガラス小弥太
小太郎とりんずは毎朝、連れだって散歩に出かける。
二人が散歩に出かけたら、ヤタをケージから出してやる。怖い小太兄のいないあいだにお風呂場で洗濯。ヤタは水浴びが大好きなのだ。
りんはお兄ちゃんの散歩に毎朝、ついて行くという変な猫だった。
散歩コースはだいたい決まっていて、約2キロ。途中の公園で犬友達たちと待ち合わせると、
りんはそこでリードを外してもらって、同い年のミニ柴の女のコと公園を駆け回って遊ぶ。
一度、その公園で遊んでいたりんを狙って、カラスが急降下してきたことがある。
カラスというのは遊び好きだから、本気で襲ってきたわけではなかったと思うのだが、
りんの真上80cmか90cmの高さを滑るように滑空してきた。
「りん、危ない」と思った瞬間、りんが真上にジャンプして、カラスにタックル。カラスはりんにしっかりハグされたまま落ちてきて、
2匹ともビックリ仰天して一瞬、顔を見合わせてから、互いに飛び下がった。ヤタがうちに来るまえの話だ。
6キロの雄猫と600グラム程度のカラスが本気でレスリング状態になっては、カラスは勝負にならない。
海辺の釣り場で、釣り人が投げた魚を奪い合って、野良猫とカモメがけんかになり、
怒った野良がカモメをくわえて走り去ったのを見たこともある。
違う種のペットを一緒に飼う場合、相性がいいかどうかというのは、飼ってみないとわからないところがある。
犬と猫の場合は、どちらかが赤ん坊の状態で飼いはじめれば、まず、問題がない。
小太郎(シェルティ)は先代の猫に抱かれて育ち、小太が別の子猫たちを兄として教育してきた。
カラスでそれが可能かどうかはなんとも。昔、飼っていた手乗り文鳥は、兄猫の肩や頭にのっても、文鳥が遊ぶのを見守ってやっていた。
ただし、頼まれて預かった別の家の猫が文鳥の鳥かごに飛び乗ったために、ショックで死んでしまった。
小鳥は心因性のショックで死んでしまうことがよくある。
鳥をつかまえるのが上手だった先代の猫は、妹猫への土産によく小鳥を生きたままくわえて帰ってきたが、
スズメもヒワも、外傷はないのに、しばらくすると体温が急に下がって死んだ。
猫にも、犬にも、「気質(たち)」というのがあり、猫だからといって、生まれつき、狩猟本能を多分に持っているコと、
狩猟本能、闘争本能ほとんどゼロというコもいる。
りんはどちらかというと、後者で、りんとヤタが「異種間格闘技」状態になる可能性はまずなかった。
もっぱらの平和主義者姉猫の茶々は最初からなんの心配もない。
問題は小太郎である。彼には長兄としての責任感がありすぎ、妹猫や弟猫たちを常に自分の保護下に
置こうとするところがあった。妹や弟の危機(そんな危機は一度もなかったのだが)が起きたときには、
妹や弟を守るためであれば、他の犬どもが家の前を通るのを阻止しにいったし、
いったん出入りとなると、小太に率いられて猫どもも呻りをあげて路地に飛び出して、侵入者を追い出した。
小太は、自分の指示に従うことを妹や弟に求めた。
言うことをきかないヤタ、ママに特別に猫かわいがりされているヤタを妬っかんでいる。
小太に首や足でも噛られたら、致命傷になるだろう。
小太とヤタにストレスがたまらないようにしないといけない。
小太が吠えているときは、確実にヤタがなにか悪さをしていることがほとんどなのだが、
ヤタを叱って、ケージに押し込んだら、「小太、もういいよ」と、小太の頭をなでて、落ち着かせる。
興奮状態を持ち越させないことが大事だった。ヤタがヨメさんに甘えているときは、小太をぼくか娘がかまってやる。
ヤタのケージは床に置かないで、小太が届かない高さのテーブルの上に置いて、互いの目線がぶつからないようにした。
ヤタに、お兄ちゃんは吠えてうるさいけど、危険じゃないんだよということを覚えてもらわないといけない。
小太には、ひどい新入りだけど、我慢するしかないのかよとあきらめてもらう。
可笑しかったのは、夫婦そろって、小太とヤタにかかりっきりになったため、
姉猫の茶々が突然、仔猫のように甘えっ子になったことだった。……→つづく。
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