手探りカラス学 ヤタがとまっている桜の下を通って、茶々が路地に見回りに出る。 「ウ・グァ・ググァ」(お姉たん、待って)。 ヤタ、地面に飛び降りて、茶姉の後を追いかけて、ピョンピョンと外に出る。 茶ちゃん、ヤタを待ってやる。「ウ・グァ」。 ヤタ、茶ちゃんの尻尾の先を嘴でつまんで、そこまでお散歩。 お兄ちゃんたちが散歩に出かけた平和な朝。 # 悪ガラス小弥太 カラスは小鳥に比べると、頑健である。手のひらに恐々のせて、壊れ物を扱うようにする必要はない。
カラスに恐々触ろうとしたりすると、先に嘴で指をつつかれる(つつかれたって、本気に怒っているのでなければ痛くない)。
有無を言わさず、さっと後ろから体と翼全体を包み込むように抱いて、太ももの上に座らせ、
両腕と胸で抱き包むようにしてやれば、そんなに抵抗はしない。
首筋や嘴の付け根をやさしくなでてやる。
日が暮れてカラスが眠くなる時間帯に膝や肩にのせてやれば、目をつむってそのままウトウト眠ってしまう。
餌をやるときには、名前をやさしく呼んで声をかけながらやること。
害意がないことが伝われば、カラスのほうから攻撃してくることはない。
カラスのサイズの鳥だと、鳥の体の特徴がものすごくわかりやすい。
頭、首、嘴、翼、足、爪、それぞれの機能を手や指でさわって確かめることができる。
鳥の嘴のすべてがそうではないと思うが、カラスの嘴は、常に硬くとがったプラスティック状ではない。
嘴の先で突っついて穴をあけたいというようなときは、嘴を噛みしめることによって先が強く硬くとんがる。
嘴の口元の力をゆるめれば、嘴自体がやわらかなヘラのようになる。
ヨメさんや娘の肩にのって甘えるときは、やわらかい嘴で、先端をピンセットのように使って、
髪の毛を1本、1本つまんで毛繕いする。
カラスの耳の穴は、実は、人間と同じくらい大きな穴が頭の両側に開いている。
耳たぶはなく、頭から首に流れる冠羽根の下に隠れている。
それだけ大きな耳の穴があるということは、カラスにとって聴覚が非常に重要ということだろう。
羽毛と翼。ヒナからだんだん羽毛が生えそろってくると、やっとカラスらしくなった気がする。
頭から首に流れる冠羽根がそろって、濡れ羽色のカラスになる。
頭の冠羽根をふくらませると(羽根が起きた状態のとき)、頭の大きさが倍くらいに見える。
こういう状態のときは甘えっこをしたいとき。
緊張しているとき、遊びに集中しているとき、警戒しているときは羽根が寝てスラッとしたシェイプになる。
翼は、ヤタの場合、右の翼の羽根が生えそろうのに時間がかかった。
羽根が折れていたり、隙間があったりすると、空気をとらえにくくなるから、飛行能力に差が出る。
N獣医師が治療不能としたのは、1か月や2か月で翼が生えそろうとは考えられなかったからだろう。
足は問題ない。右足の真ん中の爪が根元近くで折れて、丸いこぶになっている。
カラスの3本爪は、止まり木などにとまるとき、3本の爪が同時に枝を巻きつかむ構造になっている。
3本爪のUFOキャッチャーのクレーンのような構造だ。
真ん中爪がないのは不便だと思うが、左足は問題ないので、致命的な負傷ということではない。
あと、さわってわかるのは、鳥は体温が人間よりも高いということ。常温で40度くらいあるはずだ。
それだけ高い体温を維持し、またエネルギー消費が多いはずの飛行運動をしないといけないから、鳥はよく食べる。
食べたものがおなかにいつまでも残っていては飛ぶのに邪魔だから、食べたら出す。排泄量がただごとじゃなく多い。
飛び立つときにシャーッと糞をする。……→つづく。
■追記(FaceBook連載時のコメントなど)
大重:カラスの嘴がそんななんて初めて知りました。飼ってないとわからないことってありますね〜
Tra Ishikawa :そう。触ってみないとわからないことが多いね。体温とか、それから飛ぶでしょう。すると、脈拍がグーンと上がるのね。そういうのは剥製じゃわからない。生きている個体を触ることで理解できることがあるので、動物園や野鳥飼育も、勉強したい人には認めるべきじゃないかなと思う。
大重:大磯でアオバトを調べているグループも、保護されたアオバトを(許可を得て)飼っている人と、連絡を取り合って情報を交換しています。互いにわからないことを補い合う感じですね。野生に戻れなくなった傷病鳥は鳥本来の生活を送れないので、かわいそうですが、人間にとっては情報を提供してくれるありがたい存在でもあります。
Tra Ishikawa:リハビリしていた頃、大磯港で毎日、釣してましたので、釣れないときは、大磯海水浴場跡の磯場へアオバトを観にいきました。7、8年前は、江ノ島あたりから、ハヤブサの親子がアオバトを狩りに来ていました。ケガをしたアオバトということだと、車や電線にぶつかるか、あのハヤブサなんかにやられたのかなあ。アオバトって、普通のハトやキジバトなんかと、習性がだいぶん違うような気がします。
バード・ウォッチングを本格的にやっている律っちゃんみたいな人に楽しく読んでもらえるのは、書きがいがあります。
手探りでカラス学 ヤタがとまっている桜の下を通って、茶々が路地に見回りに出る。 「ウ・グァ・ググァ」(お姉たん、待って)。 ヤタ、地面に飛び降りて、茶姉の後を追いかけて、ピョンピョンと外に出る。 茶ちゃん、ヤタを待ってやる。「ウ・グァ」。 ヤタ、茶ちゃんの尻尾の先を嘴でつまんで、そこまでお散歩。 お兄ちゃんたちが散歩に出かけた平和な朝。 カラスは小鳥に比べると、頑健である。手のひらに恐々のせて、壊れ物を扱うようにする必要はない。カラスに恐々触ろうとしたりすると、先に嘴で指をつつかれる(つつかれたって、本気に怒っているのでなければ痛くないのだが)。有無を言わさず、さっと後ろから体と翼全体を包み込むように抱いて、太ももの上に座らせ、両腕と胸で抱き包むようにしてやれば、そんなに抵抗はしない。首筋や嘴の付け根をやさしくなでてやる。日が暮れてカラスが眠くなる時間帯に膝や肩にのせてやれば、目をつむってそのままウトウト眠ってしまう。餌をやるときには、名前をやさしく呼んで声をかけながらやること。害意がないことが伝われば、カラスのほうから攻撃してくることはない。
カラスのサイズの鳥だと、鳥の体の特徴がものすごくわかりやすい。頭、首、嘴、翼、足、爪、それぞれの機能を手や指でさわって確かめることができる。
鳥の嘴のすべてがそうではないと思うが、カラスの嘴は、常に硬くとがったプラスティック状ではない。嘴の先で突っついて穴をあけたいというようなときは、嘴を噛みしめることによって先が強く硬くとんがる。嘴の口元の力をゆるめれば、嘴自体がやわらかなヘラのようになる。ヨメさんや娘の肩にのって甘えるときは、やわらかい嘴で、先端をピンセットのように使って、髪の毛を1本、1本つまんで毛繕いする。
カラスの耳の穴は、実は、人間と同じくらい大きな穴が頭の両側に開いている。耳たぶはなく、頭から首に流れる冠羽根の下に隠れている。それだけ大きな耳の穴があるということは、カラスにとって聴覚が非常に重要ということだろう。
羽毛と翼。ヒナからだんだん羽毛が生えそろってくると、やっとカラスらしくなった気がする。頭から首に流れる冠羽根がそろって、濡れ羽色のカラスになる。頭の冠羽根をふくらませると(羽根が起きた状態のとき)、頭の大きさが倍くらいに見える。こういう状態のときは甘えっこをしたいとき。緊張しているとき、遊びに集中しているとき、警戒しているときは羽根が寝てスラッとしたシェイプになる。
翼は、ヤタの場合、右の翼の羽根が生えそろうのに時間がかかった。羽根が折れていたり、隙間があったりすると、空気をとらえにくくなるから、飛行能力に差が出る。N獣医師が治療不能としたのは、1か月や2か月で翼が生えそろうとは考えられなかったからだろう。
足は問題ない。右足の真ん中の爪が根元近くで折れて、丸いこぶになっている。カラスの3本爪は、止まり木などにとまるとき、3本の爪が同時に枝を巻きつかむ構造になっている。3本爪のUFOキャッチャーのクレーンのような構造だ。真ん中爪がないのは不便だと思うが、左足は問題ないので、致命的な負傷ということではない。
あと、さわってわかるのは、鳥は体温が人間よりも高いということ。常温で40度くらいあるはずだ。
それだけ高い体温を維持し、またエネルギー消費が多いはずの飛行運動をしないといけないから、鳥はよく食べる。食べたものがおなかにいつまでも残っていては飛ぶのに邪魔だから、食べたら出す。排泄量がただごとじゃなく多い。飛び立つときにシャーッと糞をする。……→つづく。
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