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世界女子ソフトボール選手権 2

上野が打たれて敗れたことは不思議ではない。

左マーク・スミス カナダ・チーム監督 右ケネス・エリクセン アメリカ・チーム監督左マーク・スミス カナダ・チーム監督 右ケネス・エリクセン アメリカ・チーム監督

「上野を倒すために、どのチームも戦略を練っている。北京から10年経って、世界のソフトボールはものすごく進化して、厳しい競争期に入っている。日本に勝つため、上野を打ち崩すためにどうすればいいかというのが進化の原動力になっているんだ」
と語ったのは3位カナダチームのマーク・スミス監督。

「1試合だけであれば、一人のスーパー・プレイヤーがいれば、勝てるかもしれない。しかし、こういう大きなトーナメントやオリンピックというのは、もはや1人のスーパー・プレイヤーでチャンピオンになることはできないのだ。上野は素晴らしいピッチャーさ。同じ日に7回を投げて完封して、3時間後には次の試合で10回を投げるなんていうピッチャーは世界のどこにもいない。そんな日本チームと戦うには、われわれはチーム全体の総合力で上回るしかないんだ。打線はもちろん、ピッチング・スタッフだって、上野と対等に戦うために、5人の投手が連携して戦う。そうしなければ、日本に勝てない」
優勝したアメリカチームのケネス・エリクセン監督。

今大会の優勝チームには、東京オリンピックの出場権が与えられる。そのことは、北京五輪以来、ロンドン、リオと競技種目として認められてなかったソフトボールの選手たちには、大きなモチベーションになった。

開催国の日本も含めて、たった6チームしか出場できないオリンピックなのだ。
世界ランキングでも上位を占めるアメリカ、カナダ、オーストラリア、メキシコなどは、今大会での優勝は無理だとしても、引き続き予選が行われることになる大陸予選での優位を目指して、チームも選手も、今大会に臨む意識が高かったように感じた。

日本は開催国枠で五輪出場が決まっているので、現在は強化中という段階。
グループリーグの試合を観ていても、アメリカやカナダが送りバントやサインプレーをビシッと決めてくるのに、日本は再三、送りバント失敗や、守備ではフィルダースチョイスなどが目立った。言ってみれば、日本だけが厳しいソフトボールをしていなかった。送りバント失敗でも、その後で盗塁成功すればいいだろうというのは、「結果オーライ」のソフトボールであって、相手が嫌がる試合運びはできていなかった。

決勝トーナメントに入る時点で、総合力ではアメリカが一枚上、二位が日本、三位がたぶんカナダということになるだろうと予想したとおりの順位になった。

アメリカとの優勝戦に敗れた後、記者会見で宇津木麗華監督に、10回のピンチで、タイムを取ってマウンドに行くつもりはなかったかと聞いた。
「上野の気持ちを折るわけにはいかないので、タイムをかける気持ちはなかった」
と宇津木監督。

上野投手にも、10回2死ランナー一・二塁でムンローにカウントが悪くなったときに、キャッチャーをマウンドに呼ぶなり、タイムを取るつもりはなかったかと聞いた。ムンロー勝負でいくのか、次のバッター勝負でもよかったのじゃないかという質問だが。
「タイムを取ったりすることは考えなかった。打たれるなんて思わなかったから」
力で押さえ込めると思った?
「ええ、打ち取れると思ってましたから」
一本気の上野由岐子は、勝負にいくに決まっている。
延長になってからも、110km台のスピードボールを連投していたのだから、体力的に疲れが出ていたわけではない。
しかし、気持ちがはやった分、配球が一本調子になったのではないか。
宇津木監督でさえ、タイムをかけることができないのに、若いキャッチャーの我妻に、ピンチを迎えたときに上野をコントロールすることなど、期待しようがないだろう。

「6点とってもらったのに、7点取られて負けたのではどうしようもないじゃないですか」と上野は自嘲気味に首をひねったが、上野が投げる試合には、監督もキャッチャーも、ほかのメンバーも口をはさめないということは、上野は一人で戦うしかないということになる。

勝ったアメリカチームからは、エリクセン監督と、先発したリケッツ投手、クローザー役のアボット投手から話を聞けた。

エリクセン監督
「世界でいちばん偉大な上野を打ち込んで、最大のライバル日本に勝った選手たち、すべての力で勝ち取った勝利であることを誇りに思う。5人の投手がそれぞれ連携して、山田や山本といった強打者との相性を考えながら、持ち味を出してくれた」
リケッツ投手とアボット投手はどちらも日本リーグでプレイしているので、日本チームについては熟知している。
先発のリケッツ投手に聞いた。
――先発して、降板してから、5回にまた投球練習をしているので驚いたのだが、最初からまた登板する予定だったのか?
「私自身、監督から、また投げてもらうから準備しておいてと言われてビックリしました。準々決勝でも、投手と一塁と両方やったから、似てはいますが、今日は特別の試合だったから、勝利に貢献できてよかった」
アボット投手には、クローザー役について聞いた。
「今日は最初からクローザー役でということで、6回からいけるようには準備していましたが、試合がもつれる展開になったので、いつ登板になるか予想できなかった。今日は打たれてしまったけど、この優勝で五輪出場が決まったことを喜びたい」

エリクセン監督は5人の投手と言ったが、リケッツ投手は1回から3回まで投げて、一度、降板。6回表からリエントリーで再登板しているので、実際には6人の投手で分担登板したということになる。

ソフトボール特有のリエントリー・ルールを駆使した繊細な継投策に、日本は準々決勝、決勝と2回敗れたわけで、エリクセン監督が言う「ソフトボールは一人のスーパー・プレイヤーの力で勝利を勝ち取るゲームではない。チームの総合力で勝つんだ」という言葉が実証されてしまった。

オリンピックまでにはまだ2年ある。その2年で、日本がどのような強化策を実行できるのか、上野に続く若手投手のスキルアップ、エラーやミスの多かった守備連携の強化などが必要なのはいうまでもない。

また、試合の采配については、監督が上野にだってドシドシ、モノを言う風通しの良さを作る必要があるだろう。

上野由岐子の存在があまりに大きすぎるために、10年経っても上野頼みが続いてきたわけだが、そのままでは、決勝トーナメントの最後の3試合で息切れしてしまうだろう。

2018.8.14


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