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TOYOTA杯 戦評

名将カルロス・ビアンチの「計算通りの勝利」

ボカ・ジュニアーズのカルロス・ビアンチも、またACミランのカルロ・アンチェロッティも、ゲーム後の会見で「ゲーム自体は、双方ともにチャンスあり、ピンチあり、両チームの持ち味を出せた均衡したゲームだった」と総括したが、はたしてどうだったか。

敗軍の将の口が重いのはこの世の常。イタリアからやってきたプレスの大半がミラノ番の記者たちで、あまりきつい質問を浴びせなかったから、アンチェロッティの本音はわからない。

アンチェロッティ監督の談話をまず紹介しておこう。
まず、交代(トマソン→インザーギ、カカ→ルイ・コスタ、ガットゥーゾ→アンブロジーニ)について。
「ガットゥーゾは足の負傷というアクシデントのため。インザーギとルイ・コスタの投入は、攻撃のスペースがなかなか見つけられなかったのを打開するためだ」
アンチェロッティ自身、ボカの素早いDF陣がミラン攻撃陣のスペースをつぶし、攻撃の芽を次々と摘みとっていったことを認めている。
「ペナルティー・キッカーとなった5人を指名したのは、ほかのメンバー(インザーギやシェフチェンコ)よりもより確実なPKを蹴ることができるメンバーと考えたから。自分はPKを蹴りたくないと拒否した選手はいない」

対するボカのビアンチ監督の談。
「出だしはミランのほうがよかった。均衡したまま続いた後半も同じだ。ボカ側のシュートがなかなか決まらなかったり、ラスト・パスの精度に欠けたことが「1-1」の原因となった。しかし、延長戦になったとたん、ミランの足がパタッと止まった。彼らはPK戦となるのを待っていたのではないか。われわれは勝つ気持ちで最後まで攻撃の手を休めなかったし、選手たちはPK戦にも最初から勝つつもりで臨んだ」

――監督の期待どおりのゲームだったか?
「ロジカルな(計算したとおりの)内容のゲームだった。われわれは長い期間、このゲームに備えて準備を整えてきたし、それが実ったゲームだったと思う」
――ハーフ・タイム、延長戦前にどんな指示をしたのか?
「特別な指示はしなかった。長い間、準備してきたとおりに戦えばいいのだから。ミランを苦しめるゲームをしよう。ミランに通常の力を出させないゲームをすることが大事だ。ミランのリズム、ミランのサッカーをさせないよう、ボールをコントロールすること。これはずっと選手たちに準備させてきたことなのだから。パンカロにもカフーにも普段の力を出させなかっただろう。その意味で、的確な戦術だったと思う。ミランの力を出させない。そうすることによって勝利を得ようというのが基本戦略だった」

前日練習後、アルゼンチンのプレスたちは、「マラドーナ2世」テベスがヒザの負傷のため、出場できないであろうことから、難しいゲームになるだろうと悲観的だった。サントスFCとのリベルタ・ドーレース杯優勝の立役者であったマルセロ・デルガドはメキシコに移籍し、テベスも出場不能。ボカが守りに守って一発のカウンターに賭けるというゲームになるのではないかというのが、イタリア・アルゼンチンのプレスだけでなく、ほとんどの専門家の戦前予想だった。

ビアンキの戦術は「攻撃は最大の防御」とでも呼ぶのに近い、果敢な攻めにあった。
前半、後半、延長戦の120分を通じて、ボカの左サイドバック「3」ロドリゲスや右サイドバック「14」ペレア、右ボランチ「5」バダグリアらは、果敢に攻め上がっていった。その結果、守りのゲームを基調とするミラン(試合前日の記者会見でアンチェロッティ監督は、「批判を受けたとしても守備的なゲームをする」と応えている)は、カフーもパンカロも守備重視とならざるをえず、前後半を通じてサイド攻撃を自ら封じてしまった。

ミランの先取点も、決して戦術的に勝ち取ったゴールではない。本来、左サイドにいたピルロがボカのカウンターに対処するため右サイドまで守りに走り、ボールを奪取。そこから結果的に逆カウンターの形でスルーを出したのにトマソンが合わせたゴールだった。
先取点で「守り重視」のミランはますます受けのゲームをしてしまい、同点に追いつかれたということだ。

カカのあのミドルシュートがポストを叩いてなければとか、あのフリーキックからのヘディングがオフサイドだったかとか、延長開始直後のシェフチェンコのシュートがとか、決定的なチャンスはミランにももちろんあった。しかし、ミランの攻撃パターンは基本戦術として、「21」ピルロを起点に、「20」セードルフか「22」カカを経由した攻撃に終始した結果、ボカのボランチや両サイドバックの素早いつぶしに遇って、ラストパスの手前で多くの攻撃が封じられたというのが今回のゲームの総括だったように思える。
シェフチェンコ、トマソン、インザーギというゴール・ゲッターがそろっていても、的確なラストパスがまわってこなければ仕事ができなかった。

ボール支配率ではややミランが上回っていたが、ミランに本来の多彩な攻撃をさせなかったビアンチの戦略がボカに勝利を引き寄せたというのが真実であろう。


この原稿は、ネットのために書いたはずだが、掲載手続きに面倒なことがあって結局、どこにも出さなかった。ぼくとしては好きなレポートだ。2005年のチャンピオンズリーグ・ファイナルのミランやアンチェロッティのことを考えるとき、このゲームはぼくの頭のなかでは伏線になった。

2005/12/28 石川とら

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